2016年6月29日
田舎の手仕事 ならいごとの旅【三方五湖うめぼし編】
夏至になりました。しばらくご無沙汰していました季節のてしごとならいごとの旅。冬には十津川のゆべしづくりを習いにいきました。
前回記事:田舎の手仕事 ならいごとの旅【十津川村のゆべし編】
二十四節気のてしごと【小寒】道草七草粥
春は山菜採り、そして、夏至のてならいには梅。
今回は、おいしい梅干しがつくりたいという女子たちが集まり、鯖街道若狭地方にある三方五湖の農家さんを訪ねました。
88歳になるばあちゃんは、いまでも洗濯機を使ってシソを揉みだすほどの量の梅干しをつくっています。熟れ鮨は200本は仕込むといいます。そんな若狭のダイナミックな規模の保存食作りから、暮らしのてしごとの技と知恵を学びました。
三方五湖の妖精
おいしい水のあるところ、おいしい米と酒ができるというけれど、梅もそうかもしれません。京都から若狭までは車で約2時間。
湖水地方の湖畔には、水際ぎりぎりまで畑と森が交差し、その間を縫うように梅の木が広がります。その五湖の中でもとくに美しいという奥三方で、妖精が住むという神秘的な景色に出会いました。
「うちの梅は、三方五湖のなかでもとっておきの場所にあるんですよ。」
農家の田上さんに梅畑のある三方五湖を案内していただきました。
「妖精が住んでいそうね、って訪れた人はみんな言うの。でも、ご縁がないと普通のひとは入れないのだと思う。あなたたちは妖精とご縁があったのね。」
半島にむかって湖畔を進み、三方五湖なかでも、奥地にあたる水月湖へ。
半島にむかって湖畔を進み、三方五湖なかでも、奥地にあたる水月湖へ。
なんと、水月湖は、上部が淡水、下部は海水が流れ込むという二重底になっているそうです。
そして、波のようなさざ波。湖畔ぎりぎりにひろがる畑と森。わくわくが募ります。
そして、波のようなさざ波。湖畔ぎりぎりにひろがる畑と森。わくわくが募ります。
あ、ここだ。
妖精がいるってどんなとこだろう、と話半分に聞いていたのですが、田上さんの言う場所がすぐにわかりました。湖岸を奥に進むほどにさざ波と樹々の影が湖面に描いた油絵のようにすいこまれ、違う世界にきたかのようでした。
木々に覆われた湖畔沿いの古道をたどると、隠れ家のように木々の間に梅畑が広がっていました。
どこの田舎もそうですが、高齢化で農作業をする人手が足りなくて、収穫物がどんどん廃棄されています。秋には大量の柿。夏には大量の梅。この素敵な畑もかなりの梅がおちてしまっていました。
もったいないので落ちてるやつを拾いたかったのですが、木になっている梅も、採る人がいないから、せっかくならいい梅を持って帰ってほしいとのことでした。
お母さんお手製のうめもぎエプロンには、カンガルーのようなお腹にポケットがついていて、木に登って梅をポケットにもぎためていきます。
「来週来たら全部落ちていたよ。ベストタイミングできたね!」
梅にかぎらず、冬があたたかった今年は、収穫が1週間はやい。お茶も88夜よりも1週間はやかったし、麦も早かった。梅も例にもれず、1週間はやかったのだそう。
でも、世の中うまくできていて、何事も、いいこともあれば悪いこともある。早くとれるからといって質がいいわけでもなかったりする。寒い冬があるからこそ甘くなったり、味がひきしまったりする。
「どういう梅をつくりたいのか。大きい梅にしたいか、小さくてもきれいな梅をつくりたいか、それによって適した環境もちがう。」とお父さん。
風が吹き抜ける日当りがよいところは成長が早く粒も大きい。 そのかわり、乾燥して日焼けみたいになったり、病原菌がとんできたり、風に吹かれて実が傷ついたりしてしまうそうです。 逆に風通しがわるく、日あたりがよくない場所は、粒が大きくならないし成長が遅いかわりに、病気になりにくく、肌がきれい。
森にかこまれた奥三方でとれた梅は、特に肌がきれいで、梅干しにぴったりなのだそう。
梅農家には言い伝えがあって、申年は不作となり、その希少価値から申年に漬けた梅は縁起がいいというそうです。ことしは丙申。多分にもれず、不作だったそうです。希少価値のある縁起がいい梅ができそうです。
「他が不作でもうちは成りがいいこともあるんですよね」
この湖の梅の森は、妖精にまもられているのかもしれません。
何より、こんな素敵な環境で育った梅を漬けられるのがうれしい。
そもそも、福井が梅の産地だというのを知らなかったのですが、日本海側では最大の梅産地でその起源は江戸時代に遡るようです。
おいしい梅干しのつくりかたを若狭の88歳のおばあちゃんに教えてもらいました。
これはたろううめ、これは紅さし、これはへーだ、これはケンサキ・・・
おばあちゃんの蔵からつぎつぎに樽がでてくる。15キロになる樽の重石をひょいと持ち上げ説明してくれました。
紅さしは在来の梅で、プラムのような赤い色が映している。
梅干し向けだけど、梅酒にしてもフルーティーな香りがしておいしい そうです。
そして、けんさきは青梅用の品種で梅酒向け 、たろううめ、へーだは改良種。
おばあちゃんが漬けたたいろんな種類の梅干しをたべくらべ。そして、新梅と古梅を比べるとどうー漬けて2週間後のものと一年前のものでは味がどうかわっていくのか。
漬けて1週間目の梅酢があがってきたばかりの梅干しを食べさせてもらいました。
まさに、プラムのよう!このままでもすでにおいしい。
あがってきたばかりの梅酢をペットボトルにいれて、シソを揉む用にとっておく
手前の梅は、1年前に漬けられた紅さし。
若狭のひとたちの保存食作りの規模は桁違いで、一般家庭で年間に仕込むへしこの量はなんと、200本!出荷している家はその10倍の2,000本ほどの鯖を樽で仕込むのだそうです。
1日1本も食べないだろうから、近所や親戚に配るためにつくるのでしょうか。大家族の頃から習慣的に作っているのかもしれません。
おじゃまさせていただいた農家さんの蔵にも、樽がずらりと並んでいて、おじいさん亡き後、数年もののへしこが眠っているようでした。
そしてさらに、なんと、おばあちゃんの家では、シソを揉むためだけに、専用の2層式洗濯機をつかっていました!
湖畔沿いの道 |
木々の中にぽっかり空いた入り口にはこんな空間が |
どこの田舎もそうですが、高齢化で農作業をする人手が足りなくて、収穫物がどんどん廃棄されています。秋には大量の柿。夏には大量の梅。この素敵な畑もかなりの梅がおちてしまっていました。
もったいないので落ちてるやつを拾いたかったのですが、木になっている梅も、採る人がいないから、せっかくならいい梅を持って帰ってほしいとのことでした。
お母さんお手製のうめもぎエプロンには、カンガルーのようなお腹にポケットがついていて、木に登って梅をポケットにもぎためていきます。
木に登っても大丈夫。 |
「来週来たら全部落ちていたよ。ベストタイミングできたね!」
梅にかぎらず、冬があたたかった今年は、収穫が1週間はやい。お茶も88夜よりも1週間はやかったし、麦も早かった。梅も例にもれず、1週間はやかったのだそう。
でも、世の中うまくできていて、何事も、いいこともあれば悪いこともある。早くとれるからといって質がいいわけでもなかったりする。寒い冬があるからこそ甘くなったり、味がひきしまったりする。
「どういう梅をつくりたいのか。大きい梅にしたいか、小さくてもきれいな梅をつくりたいか、それによって適した環境もちがう。」とお父さん。
風が吹き抜ける日当りがよいところは成長が早く粒も大きい。 そのかわり、乾燥して日焼けみたいになったり、病原菌がとんできたり、風に吹かれて実が傷ついたりしてしまうそうです。 逆に風通しがわるく、日あたりがよくない場所は、粒が大きくならないし成長が遅いかわりに、病気になりにくく、肌がきれい。
森にかこまれた奥三方でとれた梅は、特に肌がきれいで、梅干しにぴったりなのだそう。
湖畔で休憩 |
梅農家には言い伝えがあって、申年は不作となり、その希少価値から申年に漬けた梅は縁起がいいというそうです。ことしは丙申。多分にもれず、不作だったそうです。希少価値のある縁起がいい梅ができそうです。
「他が不作でもうちは成りがいいこともあるんですよね」
この湖の梅の森は、妖精にまもられているのかもしれません。
何より、こんな素敵な環境で育った梅を漬けられるのがうれしい。
福井の梅の品種の多様性
そもそも、福井が梅の産地だというのを知らなかったのですが、日本海側では最大の梅産地でその起源は江戸時代に遡るようです。
三方町の伊良積(いらづみ・旧西田村伊良積)の平太夫(へいだゆう)と助太夫(すけだゆう)の庭に植えられていた梅に始まり、その屋号から「平太夫梅」「助太夫梅」と呼ばれていました。平太夫梅の古木は、福井梅の起こりを物語る重要な遺産です。その後、先人たちの努力によって明治時代にこの地のあった品種改良が行われ「平太夫梅」と「助太夫梅」を交配して生まれたのが、今の「紅映(べにさし)」です。(小浜梅生産部会HPより)
おいしい梅干しのつくりかたを若狭の88歳のおばあちゃんに教えてもらいました。
これはたろううめ、これは紅さし、これはへーだ、これはケンサキ・・・
おばあちゃんの蔵からつぎつぎに樽がでてくる。15キロになる樽の重石をひょいと持ち上げ説明してくれました。
紅さしは在来の梅で、プラムのような赤い色が映している。
梅干し向けだけど、梅酒にしてもフルーティーな香りがしておいしい そうです。
そして、けんさきは青梅用の品種で梅酒向け 、たろううめ、へーだは改良種。
おばあちゃんが漬けたたいろんな種類の梅干しをたべくらべ。そして、新梅と古梅を比べるとどうー漬けて2週間後のものと一年前のものでは味がどうかわっていくのか。
漬けて1週間目の梅酢があがってきたばかりの梅干しを食べさせてもらいました。
まさに、プラムのよう!このままでもすでにおいしい。
あがってきたばかりの梅酢をペットボトルにいれて、シソを揉む用にとっておく
手前の梅は、1年前に漬けられた紅さし。
若狭のひとたちの保存食作りの規模は桁違いで、一般家庭で年間に仕込むへしこの量はなんと、200本!出荷している家はその10倍の2,000本ほどの鯖を樽で仕込むのだそうです。
1日1本も食べないだろうから、近所や親戚に配るためにつくるのでしょうか。大家族の頃から習慣的に作っているのかもしれません。
おじゃまさせていただいた農家さんの蔵にも、樽がずらりと並んでいて、おじいさん亡き後、数年もののへしこが眠っているようでした。
そしてさらに、なんと、おばあちゃんの家では、シソを揉むためだけに、専用の2層式洗濯機をつかっていました!
10キロの梅を持ち帰るくらいで大変とは言っていられません。数百キロ単位で仕込めるようになってようやく農家の嫁としてやっていけるのです。
2層式洗濯機なら、脱水機が分かれていて便利。
梅干しを漬ける
黄色くなるまで2日漬けておくひとも。 |
さっそく、帰宅して梅干しの仕込み。
まずは灰汁抜きが必要。水に一晩浸すところですが、翌日から出張が入っていたので4時間待ちました。それだけで刻はすでに深夜です。
シロップにするときは、青梅を一度冷凍させると繊維がこわれて早くしみ出しやすくなると聞きました。2キロは冷凍庫へ。
すごく疲れているはずなのに、うれしくて早朝に目が覚めてしまいました。
申年の縁起にあやかりいい梅干しになりますように!
オススメの本
佐藤雅子「私の保存食ノート いちごのシロップから梅干しまで」
スピード、簡単、チンするだけ、といったうたい文句がならぶ数ある料理本の中で、時代を感じさせる昭和の主婦の丁寧なくらしを綴るレシピ本。今の時代にはなかなか手に入らない貴重な内容だと思います。
自然食通信編集部「手づくりのすすめ」
こちらもよく保存食をつくるときに参考にさせてもらう一冊。
ただ、梅干しの場合、昔のレシピの方が20〜30%と塩を大目に使っていると思います。
今風のクックパッドで作ってもよいのですが、人生の先輩やその道のプロに学ぶことで、もっと理にかなったいきた知恵や人生観をまなぶことができるような気がします。
いなかの手仕事ならいごとの旅。次はどこへいこう。
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