2013年12月28日

宮崎駿「シュナの旅」に見る「死んだ種」と「黄金の種」

1 件のコメント :
ジブリ映画の原点とも言われる宮崎駿監督の「シュナの旅」を読みました。


飢餓に苦しむ小国の王子シュナが、民を救うため、黄金の穀物を求めて西へと旅する物語。

チベットの民話が原作とされています。


それは、土地がやせ、作物が育たず、飢えに苦しむチベットの小国の物語-。


ある日、王子シュナは行き倒れの老人を救う。
民の飢えを救うために、金色の種を求めて旅をし、年老いて倒れた王子だった。


「西のかなたに黄金の穀物が豊穣の波となってゆれる大地がある。」
と言って、息をひきとる。

かつて王子だった老人がもっていた種は、脱穀したあとの「死んだ種」でした。
シュナは、民を救うため「黄金の種」を探して旅に出る。


数年後、奴隷を売買する町にたどりつく。
恐らくチベットから、西へ、中東のあたりでしょうか?

麦を売ってるバザールがあるが、すべて「死んだ種」なのでした。

そして、死んだ種と交換するために人間が神人へ売られていく。

人は、昔は自分で種を採り、穀物を育てていたのだが、種をまいても育たなくなってしまい、神人の支配におかれてしまったという。

シュナは、奴隷として売られていた少女、テアを助け、神人の世界へ・・・
そこで衝撃の事実を知る。
売られていった人間の神人の世界での末路とは-。



作品にでてくるシュナ王子の国で作られていた「ヒワビエ」は実が小さく、収量が低い。
恐らく、インド、ネパール、ブータンでも栽培されているシコクビエのようなものでしょうか。

そして、西へ西へとむかい、黄金に輝く麦の種を探す旅にでる。


日本の農村においても、種に関する逸話がたくさん残っています。
結婚を機に、種が旅してきた話。
神事に使われるタネが奉納とともに旅してきた話。
弘法大使が、命がけで中国から持ち帰ったとされる麦の話。
命がけで他の村からよく育っている作物の種を盗み出してきた村人の話。



「タネはいのち」

死ぬことが再生のプロセスであり、
タネは再生を象徴する神聖なものだった。

それが、人間が種をつくることをやめてしまい、命を生まない「死んだ種」を神人からもらう代償に、人の命を差し出すというお話は、 現代社会への痛烈な批判のように映るのでした。

現在、日本で生産されている野菜の種は、9割が外国産。
日本人は、種をとることをやめてしまい、種は外国から輸入するという選択をした。

1960年代、宮崎駿監督が初期に描かれたあまり注目されることのない絵本ですが、いま再びこの本の意義が問われる時代になってきているのではないかと思います。


 「いつのころだったか、昔、昔、どのくらい昔だったか、あるいはずっと未来のことか―」

と、はじまる物語。

これは、昔の民話ではなく、予言なのかもしれない。


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1 件のコメント :

  1. 初めまして。この本は長く手許に置いてあったのですが、引越しで処分してしまいました。
    「種が育たなくなり、神人の支配におかれた」
    と言うくだりは忘れていました。まるでF1や遺伝子操作の種みたいですね。

    種取りは面倒ですが、小さな家庭菜園でも作っていると、近所の小母さんが来て、茄子の種取りを教えてくれたり、ちょっと珍しい花があると、種が出来たら分けて欲しい、と言われます。年配の方は、種への思いが強いのでしょうか。あるいは、自家採取の種は、コミュニケーションツールの一つなのでしょうか。見習わなくては、と思います。

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