2014年7月20日

伊吹山麓の薬草村を訪ねて(1)暮らしに根付いた薬草文化

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伊吹山の麓にその薬草村はありました。
見渡す限りの段々茶畑。

徳島の天空の村訪問に続いて、茶に縁があるようです。
茶のあるところに、こんにゃくあり、と言われますが、炭焼き、養蚕文化は全国の山村文化に共通していますね。特にこの地域ならではの生業には、薬草文化があります。

在来のヤマチャ畑。茶畑以外の土地を「タダバタ」と区別して呼ぶ。山奥の「ミヤマ」と家の近くの常畑「キューバヤシ」の間にある「ムツシ」では、焼畑が営まれていた。

薬草村の歴史 history of plant medicine

伊吹山はかねてより、花崗岩が薬草の自生に適していたこと、木本がほとんど蔓延っていないことから、世界でもめずらしく約280種類の薬草が自生していると言われています。


ここに住んだ人たちが薬草とかかわってきた歴史も長く、古くは、壬申の乱で敗れ、自殺した大津の皇子(弘文天皇)の妃と御子が落ち延びたとされるその里には、内裏の医学知識が伝えられてきたといいます。

そして、時代をさらに進むこと、戦国時代、織田信長はポルトガル宣教師に作らせた薬草園は、伊吹山付近にあったのだそうです。


そんな伊吹のひとたちの普段の暮らしの中には、今でも伝統医学の知恵が息づいているのでした。

昭和初期、それまで生業としていた製茶や養蚕、炭焼きが衰退したとき、漢方薬の生産組合ができ、豊かな資源を新たなナリワイとしていこうという動きが加速されたようですが、商売にするという意識よりも、家庭の薬箱としてお庭や、「出作」とよばれる伊吹山の麓に開墾した畑でそだてられてきました。
暮らしの一部として当たり前に使ってこられた地域の薬草文化が、いま和のハーブとして注目されています。


家庭の薬箱 kitchen pharmacy

庭に生えるトウキ(当帰)。
タネができるまでに3年の歳月がかかるため、根こそぎとることなく、タネが落ちてから刈り取る。
すると、順繰りにあたらしい芽が生まれ変わる。


ちょうど「どくだみ」を干しておられました。


薬草は、有効成分にもよりますが、紫外線に弱いフラボンを含むものは特に陰干し、肉厚な葉は、日干ししてからしおれたら取り入れて陰干しにするのだそう。


家のまわりには、ほかにも、メギ、キハダ、ギボウシ、ゲンノショウコ、コンブリ(アサツキ)、シシウド、ウツボグサ、アマチャ、ナツメ、ミョウガ、サンショウ・・・

植えられているのか、自然に育っているのか、先祖代々受け継がれてきた多様な植物がありました。





「押し切」とよばれる野草の裁断機は、各家庭に1台はあるという・・・

お茶、入浴剤につかう薬草は、8~10種類ブレンドされる。


「伊吹百草」は伊吹の名産ですが、たくさんの薬草がブレンドされたもの。
各家庭によって、季節によっても内容は変わってくる。



メギ。鬼皮をはぐと、アマ皮はウコンのような黄色をしていて、とても苦く、胃腸に効く。
するどいトゲから、地元では「トリトマラズ」と呼ばれているそうです。


道沿いに咲くカワミドリ。薬効が高く、薬事法で規制されているほどだというが、さりげなく道端に生えている。


伊吹ジャコウソウ
西洋ハーブでは、タイム。

わざわざ西洋から取り寄せなくても、日本ならではの豊かな和のハーブがたくさん。




郷土料理にも利用される薬草。
冬の間雪で閉ざされるこの地域では、乾燥させて裁断、または粉末にし、保存するか、焼酎漬け、もしくは塩蔵にして、冬の間の食事としてきたそうです。






シャクのハンバーグ、ふきの佃煮、ウドのサケマリネ、クロモジのゼリー・・・

「どこで覚えられたのですか?」
と訪ねると、ふつうに家庭で食べてきた郷土料理ですよ、ということでした。

ほんとうに素晴らしいお料理でした。



今回の旅は、伊吹和ハーブ塾のフィールドツアーで訪問しました。
HP http://form.wa-herb.com/wa-herb_ni_fureru/



前回記事:


農ある暮らしを訪ねる旅(5)天空集落で受け継がれる「タネ採り文化」

ブータンの山村集落をたずねて・・・(3)照葉樹林文化とブータンの農耕

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