2016年11月1日

田舎の手仕事をたずねる旅【植物と灰汁の知恵】

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強い灰汁と、弱い灰汁

日本の手仕事を学びに農村へ通っていると、「灰」がいかに生活の中で活かされ、重要な役割を担っていたのかに気づきます。

昔は「はんや」といって、集落の人たちが、灰をとりに行く場所があったようです。

野生の麹菌を採集するとき、こんにゃくを固めるとき、藍のスクモを作る時にも灰汁を入れます。

「どんな灰がいいのですか?」

田舎のおじいさん、おばあさんに出会ったら必ず聞く質問。
ところが、その地域によって、灰を使う目的によっても答えが違います。

使う灰の素材は、雑木だったり、稲藁だったり、ソバ殻、大豆殻・・・。なんの灰を使うかは地域によって違いますが、種麹をとるときに使う灰は、一様に「椿」がよいと言われます。

雑木は針葉樹はだめ。
豆殻には大豆はよくて小豆はだめ。
紙やたばこが入った灰もだめ。
雑木の中でも樫がいい。でも、薪の灰はなにが入ってるかわからないから毎年違う。
藁の灰なら成分がほとんど同じだから安定する。
「弱い灰」だと、さらに焼き締めて強くします。

混じりけのない純粋な灰が近年、手に入らなくなって来ていると言います。
灰を作るためだけに、ストーブもあるけれど、あえていろりを使っているというおばあちゃんも。
灰を作るのも簡単ではないようです。


「強い灰と、弱い入ってどうやって見分けるのですか?」

唐突な私の質問に、おばあちゃんは何もいわず、ペットボトルを取り出しました。

「ちょっと味みてみ?」
灰汁を口にしてみると、ぴりぴりします。

「強い灰汁はなすいんやで。」

「なすい」はじめてきいた言葉でした。ナスみたいということでしょうか。
語源はよくわかりませんが、「なすい」かどうかがいい灰汁の判断材料なのだそうです。

いい灰汁ができたかどうかは、舌で覚えるのです。
灰汁の味見をする機会ってなかなかないのでいい経験でした。


灰汁の取り方

大分の農家さんにて灰汁作り


大分の農家さんのところで灰汁を作っているところを見せていただきました。
大鍋の底に小さな穴があいていて、コーヒーのドリップのように、ぽたぽたとゆっくり液体が下のバケツにたまっていきます。
その液体は透明に近い色で、何度も何度も、「なすい」灰汁になるまで繰り返します。
しばらく置いておくと、いろが茶色になっていきます。

十津川村のおばあちゃんちの灰汁


こんにゃく


地域によって違う灰の作り方ですが、灰汁によって、こんにゃくの風味や歯ごたえも変わって来ます。
もちろん、こんにゃく芋の成分も重要なのですが、味の決めては灰汁だといえるのではないでしょうか。

なかには、こんにゃくを作るための灰専用に広葉樹の雑木を燃やしているおばあちゃんもいました。
集落のなかにはこういうこだわりのあるおばあちゃんがいて、灰をわけてもらうのだそうです。
灰が手に入らなくなって来たため、いまでは、市販の水酸化カルシウムか炭酸カルシウムにおきかわってきましたが、灰で作ったこんにゃくは、ぜんぜんちがうんです。

徳島県の那賀町、山林地帯の人たちは、木灰だと藁灰とはぜんぜん違う強い灰汁がつくれるといいます。那賀町は、田んぼが少なく、藁が手に入りにくい。そのかわり、炭焼きも現役で続けられており、木が豊富にあります。

那賀町にて。木灰でこんにゃくの作り方を学ぶ。


図:こんにゃくの木はこんな感じ。
芋が成熟するには、3年かかります。
こんなに長い間芋をそだて、時間をかけて灰汁をつくり、芋を固めて、モグラさえ食べないエグみの強いコンニャクイモを食べようと思ったのは日本人くらいではないでしょうか。究極のスローフードだとおもいます。




これまた、アジアに古くから根付いた知恵のひとつですが、麹菌。Aspergillus oryzaeは、アジア特有のカビ菌で、穀物の炭水化物を糖化してくれる菌です。

東南アジアやヒマラヤでは、穀物を粉砕して団子状にしたものにカビをはやしたものが使われますが、日本や台湾、中国南方では、バラ麹といって、穀物の一粒一粒に菌糸をめぐらせたものが使われます。
東南アジアの餅麹
台湾のベニコウジ

この、麹菌を採集する時につかうのは、椿の灰がよいのだそう。
ごはんを灰にまぶしておくと、アルカリに弱い菌は死滅し、麹菌だけがうまく繁殖してくれます。

わたしはこればかしはまだためしたことがありません。
種麹は菱六さんにお世話になっております・・・。

染料としての灰


灰といえば、陶芸をされる方は、食品よりも釉薬を思い浮かべられるのではないでしょうか。
染料としても昔から使われて来ました。
藍のスクモも、灰の加減によって色が変わるのだそうです。
奥が深い分野でよくわかりません。

こだわりの灰汁を作り続けるたくさんの物語を聞いて来ました。
いろんな灰汁を作ってみたいです。




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