2012年12月16日
民族植物学(2)伊根に伝わる聖地青島の妙薬
昔、昔。伊根の町には、富山から薬屋が行商に来ていたという。伊根の中でも有名な薬師がいたそうな。
口伝によると、その薬師は代々、7つの植物を調合したという秘伝の薬を作っていた。
京の都からも、医者にかかっても治らない患者が、評判を聞いてはその丸薬を買いに来た。
薬屋はだいたい、先祖伝来の薬の製法を秘密にしている。
7つの植物がなんだったのか、今になってはわからないそうなのだが、そのうちの2つは、伊根湾に浮かぶ無人島、「青島」のものでないといけなかったという。
青島は、女人禁制の聖地とされ、原生林から木を持ち出してはならなかった。
何百年もの間保全されてきた椎の原生林は、「魚付保安林」と呼ばれ、湾に魚が生息する絶好の条件をつくりだしてきた。
その青島には、面白い植物がたくさん生えている。
葉緑素のないギンリョウソウ、真っ赤な珊瑚のようなハママツナ。
ギンリョウソウは山でよく見かけるのだけど、ハママツナは見つけるとちょっとテンションあがります。
青島エコツーリズムの様子は狛狗さんの日記「青島散策」に詳しく書いておられます。
青島散策の時に、ガイドの加藤さんから聞くと、
評判の妙薬に使われたという2つの植物を教えてくれました。
①ツワブキ(キク科)
ツワブキは、ヘキセナールという抗菌成分が含まれ、食あたりや下痢、胃腸に効くといわれてます。
ま、つわぶきはどこにでもあるだろ!ってつっこまれそうですが、青島のツワブキでないと効かないのだそうです。
確かに、陸上に生えてるツワブキより、大きい。
ツワブキは、フキに比べてアクがすくなくまろやか。フキの代わりにツワブキを使って「きゃらぶき」という佃煮を作る地域も。
同じキク科のフキは春に花が咲きますが、ツワブキのシーズンは秋。春の少しの期間だけ食べられるフキの花とちがい、ツワブキの黄色いお花は10月頃~12月までと長期間咲いています。つぼみはそのままてんぷらにして食べるんだそうです。 茎は春先、花は秋と、長期間楽しめるのがツワブキであります。
つわぶきの花 |
②ヒトツバ(ウラボシ科)
これも、どこにでもあるもの。
「夏来てもただひとつばの一つかな」と詠んだのは松尾芭蕉。
「膀胱に通じ精気を増し五労を補う」と古書にあるように、利尿に用いられた。
というより、園芸の世界では、盆栽にしたり、生け花にも使われるので、薬草としてというよりは、そちらの方が馴染みのある植物なのではないでしょうか。
さて、あと5つの秘薬の原料となる植物とはなんなのでしょうか??
謎は謎にしておきましょう。
その他、伊根の史書などに出てくる民間療法。
マムシ => 焼酎につけこんでおく。
フグの肝 => ムカデに刺された時など、毒には毒で制する ※マネしないでください。
ヨモギ => 擦り傷、けが
ドクダミ(ダメ) => できもの
チドメグサ => 止血
センブリ => 腹痛
ショウガ => 風邪
ウメボシ => 風邪
玉ねぎの皮 => 解熱
ゲンノショウコ => 腹痛
植物はだいたい、どこにでもある薬草類ですが、マムシやフグの肝を使うというのは、ちょっと怖い気がします。
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