2013年12月23日

ブータンの山村集落へ手種(てだね)をたずねて・・・(1)おばあちゃんの知恵を学ぶ農村調査

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ブータンでは、GNH向上を目指して、国土100%をオーガニックに変える政策が進んでいます。
インドのオーガニックを推進するNGO,Navdanyaとブータン政府GNH委員会の共同調査で、ブータンの農村を半年かけてまわりました。

その時の記録は英語で書き留めてあるのですが、農村で長く暮らしていると、ブータンの農村と、日本の山間集落の暮らしには、驚くほどの共通点が見えてきました。
ぼちぼち思い出しながら、ちょっとづつエッセイを書いていきたいです。




「手だね」という言葉は、京都の山村集落で初めて耳にした言葉です。

手から手へ。親から子へ。
世代を超えて、自家採種により、ひっそりとつないできた作物の種。

テダネ ―

市販されている種と区別して、山間部では、こう呼んでいるのです。

思い返すと、ブータンでは、当然のように種を保存していて、山の民が時々、馬で下界に降りてきて、ほうれんそうの種やじゃがいもを、米やフルーツと交換して帰っていました。
亜熱帯に位置する低地の民は、たまねぎやほうれんそうの種は採れないから山の民から買う。

流通ルートが限られているからこその多様性が維持されていたのでした。



ヴァンダナ・シヴァ氏から、農村調査するときの質問項目についてアドバイスいただきました。

  • what grows well now; and what used to grow well there? What did their grandparents grow, eat, and use?
  • What sources of wild biodiversity used to be a source of livelihood, food, and usage?
  • (e.g. forest products, vegetables, medicinal herbs, materials)
  • linkages – for example between the health of forests, trees, wild animals, livestock, crops, and village livelihood.
  • what methods used to work that no longer work. Such changes may be due to water constraints such as water shortages, climate instability, etc.


よく育つ作物は何か?以前、おばあさんが育てていたものは?
天然の資源(植物、生き物)を生活にどう活用しているか?
おばあさんの時代と比べてかわったこと。
作物の収量と天候、森林や野生動物と家畜との関係など、相関をたずねること。


Navdanyaで研修を受けていた時、強調されていたのがGrandmother's knowledge、つまり、「おばあちゃんの知恵」なのでした。



自然を読む力。あるべき姿を活かす力。
本来、人間には備わってるもの。

カレンダーどうりに種をまくのではなく、鳥の鳴き声や咲く花の時期で、日々移ろう気候の流れを知る。月の満ち欠けに合わせて水をやる。

対症療法的に作り出された新しい技術よりも、そういう、古来からの土着の知恵がいかに合理的なことか。利便性を追求するあまり、現代人が忘れてしまった、失われつつある力を掘り起こして伝えていこう。そんなコンセプトではじめた半年間にわたるブータンでの農村調査。



この経験が、日本の古くから伝えられてきた物語の世界へと誘うことになったのです。

ブータンの民家の軒先に吊るされるまじない。どこかしめ縄に似ている。
ブータンの民家の軒先に吊るされるまじない。どこかしめ縄に似ている。


「何の種をとってますか?買っている種はなんですか?」「たねはどうやって保存しますか?」
「なぜ種を保存するのですか?」
「それぞれ何種類育ててますか?どう使い分けていますか?」


帰国してからも続けている研究課題。
ブータンと日本の農村を比較するのもとても面白いです。


それにしても、ブータンにしろ、インドにしろ、日本にしろ、
こういう民俗的知恵を受け継いでいるのは、やっぱりGrand Mother's knowledge、おばあちゃんの知恵なのですね。

(つづく・・・)



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参考文献

Ministry of Agirculture (MoA). 2010. Agricultural Statistics. (2009). Royal Government of Bhutan
The Center for Bhutan Studies.(2008). Indicators for Gross National Happiness.
RNR. (2008). Promoting organic farming in Bhutan: a review of policy, implementation and constraints. pp.28
ブータンの山村集落へ農と暮らしをたずねて・・・(6)幸せの国のブータン人は幸せか?

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