2014年1月8日

ブータンの山村集落へ農と暮らしをたずねて・・・(5)ミルクロード~牛乳のとおる道

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早朝。
静かな村のいつもの朝。
ヒマラヤ山脈の麓、Deothangの町に、 行列ができていました。
牛乳の配達やさんが来ます。

牛乳と言っても、日本のように、瓶で来るわけではありません。
ミルク缶を積んだトラックが通るのです。



■ミルクロードの旅へ

はじめて、ミルクバンを見たときは、どうやって牛乳を購入していいかわからず、ただぼうぜんとしていました。

「ミルクボトルを持ってないの?ペットボトルでいいからもってきたらいいよ」
と、運転手のおじちゃん。

Deothangの町を、端から端まで集落をまわって牛乳を集め、 買いたい人に販売もしながら、州都、Samdrup Jongkharのミルクショップへ向かうという・・・

「ぜひ、お手伝いさせてください!」

早朝から集落の様子が見て回れるなんて、これは、同行させてもらうしかない!
頼み込んで、次の日、3時間にわたるミルクロードの旅に出かけることになりました。
お手伝いといいつつ、ほぼ見てるだけだったわけですが^^

せっかくなので、仲良くなった林務官のお兄さんからGPSを借りて、地形を記録しながら、牛乳マップをつくることにしました。

午前6時、いざ出発。
5つの集落をまわります。



村に入ると、村人たちがミルク缶をもってどんどん集まってきます。
30分前から待っている村人たちも。

『いくつの町を越えていくのだろう。明日へとつづく、この道を~♪』

ついつい歌いたくなってしまう風景が広がっていました。








朝6時に出発した回収は、9時にようやく終わりました。
舗装されていない狭い道が連なる集落の移動。
この間、約60キロしか走っていなかったのに、3時間もかかりました。


あつまった牛乳は、車で1時間先にある州都Samdrup Jongkharへ持っていきます。
10時am
ここでも、開店前から長蛇の列ができていました。

みなさん、ペットボトルをもってきています。
回収したばかりのミルクをいれてもらうのですね。

Samdrup Jongkharの牛乳店


■牛乳の加工技術と伝統的流通システム

ところで、せっかく買った牛乳が、次の日にはヨーグルト化していて驚きました。
冷蔵庫に入れておいたにもかかわらずです。

「煮沸してなかったでしょう?そうなるの、当たり前でしょ?」

そんなことも知らなかったの、とばかりにルームメイトに言われてしまいました。
日本の牛乳がいかに、調整されているかよくわかります。
まったく手が入ってないと、すぐに沸騰させてから保存しないとだめになっちゃうのですね。

日本の牛乳では難しいかもしれませんが、ブータンの一般家庭では、チーズやヨーグルト、バターを作ります。
ヨーグルト製造中

バターを保管しておく民具
ブータンのチーズは、石のように硬い。旅行のおともに。


町と町をつなぐ街道を行くと、途中で商店や、牛の休憩所が見えてきます。
街道を行きかう人たちを観察しながら、売店でお茶をのみながらひとときを過ごすのが私はとても好きです。

同じように、牛たちも、ちょっとした小屋でお休みできるようになっています。

そして、牛のたまり場は、乳製品のバザールでもあるのです。
まるで、日本でいう宿場町とか、関所のようです。

街道でたむろしている牛たちがいれば、牛飼いからチーズやバターを購入しましょう。





■在来の牛とジャージー牛

集落をまわりながら、今日は誰がいくらとれたか、帳簿に記録していきます。
Deothang Milk Marketing Group(DMMG)は、牛乳の組合です。

仔牛の購入のために資金援助したり、飼料の提供、技術指導、牛乳の集荷、販売を行っています。牛乳が売れた収入から、飼料代を差し引かれた分が、農家さんに配分される仕組みです。

DMMGの総会にて。真剣に議事を聞く組合員。

種の話と同じで、家畜にも、在来種と改良種の話がでてきます。

にわとりの改良種は、 卵を産んでもあたためる習性がなくなってしまっているので、自然に孵化できない。

在来の牛は、山の中でも元気に走り回るけど、牛乳の収量を高めた改良牛は、デリケートですぐ怪我をして、治療にお金がかかる。
そして、仔牛を買うために、組合から借金をしなくてはならない。

牛乳の収量が増え、現金収入が見込める改良種を借金してでも導入すべきか。
自分たちの消費するぶんだけでよいならば、放牧しておけばよい手のかからない在来の牛を飼うほうがメリットは大きい。



在来作物と同じく、売る用と、消費する用、使い分けている家庭も多い。

組合で購入を進めているジャージーが約60%を占める。
つづいて、Nublanが19%、Jatshaが13%。Yangku4%、Jaba3%とつづく。


姿を消す在来作物と同じく、在来の牛や鶏も姿を消しつつあります。
かつて日本もそうであったように・・・。
あと数年もしたら、ホルスタインやジャージーだらけになってしまうのでしょうか。

一つ言えることは、在来牛やにわとりの自然にもっている本来の能力や暮らしの中でともに生きてきた文化的意味を再評価していこうという動きも広がりつつあります。

お金だけではない、もう一つの指標、GNH。
有機農業や在来種の生活のなかで守っていくこと。
それが、幸福のひとつの条件として位置づけられているのです・・・

在来の牛


最後に、
Deothangに戻ってきたミルクバンは、川へ向かいました。



一日のおわりに、ミルク缶を洗うのです。

おつかれさまでした。
ありがとう。



(つづく・・・)

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