2013年11月7日

ホームガーデンに見る植物民俗学(1)五木の赤大根を探しに熊本へ

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五木の赤大根を育てるようになって、ふと疑問。

母本選抜をどのような基準ですればいいのだろう?

本物の五木の赤大根の姿を見たことない私は、京都で育てる大根を「五木赤大根」と呼ぶことに抵抗がありました。
もしかしたら、現地のものとは、似ても似つかないものになっているかもしれない。

種は旅するものだから、姿形を変えるのは仕方がない。そうやって、多様な品種が昔から生まれてきたのだから。と、言ってくれる人もいる。
だけど、育てるからには、実物をどうしても見たい!



ようやく、その願いがかないました。


五木の村については、ダイコンがきっかけで、初めて知りました。
調べているうちに、焼畑のこと、椎葉村とも尾根を挟んで、隣町にあるということ。
とても興味がわいてきたのです。

ときは、年に1度のお祭り、五木の子守唄祭がおこなわれていました。

熊本五家荘と五木村、宮崎椎葉のあたりは、平家落人の里と言われる。
椎葉までは行けなかったけど、山の上に見える高地集落は、ブータンの景色にそっくりでした!

和製チーズと呼ばれる熟成豆腐がウマイ!
まず、乾燥させた豆腐を6か月ほど、味噌につけこむ。
平家の保存食と伝わる。




さっそく、平家の里で赤大根を見つけました。

おばちゃん、おじちゃんたちが、机を囲んでお茶を飲みながら雑談していたので、 混ぜてもらいました。

「それは、平家ダイコン。種は売ってないよ。 ずっと、自分たちで採ってるんだから。」


赤大根には、真っ赤なものと、紫っぽいもの、形も長細いものから短いものまで、多様な大根が並んでいた。五木赤大根と言われる大根はいったいどれなのか?!

それぞれ、いつごろからあったものか、いつから紫色のものができてきたのか。
そんなことを訪ねていると、出てきた言葉。「そっちの赤いのは、昔からずっと自家採種しているから、売ってないよ。」

タネはどうしていますか?という質問は、最後にしている。
まずは、どの品種を多く育てているのか、それは何のためか。
種の話はそのあとだ。

ところが、ここのおばちゃんたちとの雑談では、種の話を先にされたのです。
ちょっとびっくり。
それほど、自家採種が当たり前のように行われているとは!
平家の里

それに、とっても面白い話がきけた。

  • 五家荘の赤大根は、平家ダイコンと呼ばれ、皮は真っ赤だけど、中は白。五木の赤大根(出ル羽大根)は、芯まで赤いと評判。
  • 紫がかったものは、最近導入されたもので、ここ10年くらい前ではないか。
  • 紫の方がやわらかい。赤の昔からのは、固いから、漬物むき。なくなってきている。出ル羽の赤大根は、なぜか甘くてやわらかかった。
  • 焼畑(コバサク)が行われていたころ育てられていた赤大根は、やわらかく、もっと丸い形をしていた。
  • 畑=焼畑のことだった。常畑は、畠。
  • 焼畑をする土地は、山の中。焼畑ダイコンは、表土に栄養があるから根が短くなる。焼畑がなくなって、常畑で育つようになり、長細く変化した。標高の低いところに移されると、色も薄くなった。
  • 形は土地によって変わる。そして、色は、気候(標高)によって変わる。つまり、同じものを作り続けたければ、その場所でつくらないといけない。


平家の子孫かもしれない村人たちの、在来野菜の色形に与える風土の影響に対する認識は、とても勉強になりました。

ところで、五木赤大根はどれなのか?


ぜんぶ。
ではないでしょうか。

五木といっても、出ル羽、コベット、頭地(中心地)では、姿形が変わってくるのです。
焼畑で作られる大根、常畑、キッチンガーデンで作られる大根ではまた違います。
同じ村の中でも、これほどの多様性があることに驚きつつも、本来の姿形を維持することのむずかしさを痛感しました。

母本選抜のときにどれを残すか?

それを考えるのは、人間のエゴであり、種が落とされたその地において、自然とあるべき姿に落ち着いていくのが在来種なのかもしれません。

そんなことを考えた火の国、肥後国への旅でした。

つづく。
次回、ホームガーデンに見る植物民俗学(2)は、雑穀について書こうと思います。


第2回、更新しました。
ホームガーデンに見る植物民俗学(2)五木村の多様な焼畑のカタチと伝統的知識

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前回記事:

民族植物学(1)貧しい家は娘を百姓に嫁がせた
民族植物学(2)伊根に伝わる聖地青島の妙薬
民族植物学(3)天然の植物マニキュア
五木赤ダイコンは根も葉もトウも赤い!
ダイコンのたねとりまとめ
ダイコンの葉も紅葉する?!
ダイコンの起源と在来大根コレクション


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