2014年1月27日

ブータンの山村集落へ農と暮らしをたずねて・・・(6)幸せの国のブータン人は幸せか?

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ブータン有機農業調査で半年間滞在していた町、Deothangに新しく有機野菜専門のマーケットができたそうです。

困ったことに、地方の町は家庭で使う分だけしか生産しない自給的農家が多く、野菜が欲しいと思っても、なかなか手に入らなかったのです。 今住んでいる漁業の町、伊根町に魚屋さんがないのとおなじことですね。2年もたつとずいぶんかわっているのでしょう。

kuenel online(英語): Market shed for organic products


さて、ブータンで農村調査をすることになった経緯について前回書きました。

前回記事:ブータンの山村集落へ手種(てだね)をたずねて・・・(1)おばあちゃんの知恵を学ぶ農村調査



これまではブータンの日常について書いてきましたが、ちょっと調査のことにも触れておきたいなぁと思います。


■国土100%オーガニック計画


ブータンでは、GNH(国民葬幸福)を高める一つの政策目標として、「国土100%オーガニック計画」がはじまっています。


Jigmi Y. Thinley首相はいいます。

「有機農業は生きたGNH(Living GNH)である」

 以下、2010年のティンレイ首相による有機農業に関するスピーチの要約です。

"Going organic will empower farmers by reducing their dependence on foreign farm inputs, chemicals, and imported patented seeds, and by creating local seed sovereignty, and increasing reliance on local wisdom, traditional farming methods, and freely available local materials like manure, biomass, and leaf compost that fertilize and enrich the soil. Going organic will strengthen our culture and rural communities."

有機農業によって、外国からの化学肥料や種子の輸入に頼るのではなく、種子の自給を確立し、在来の知識や伝統農法、地域にある資源を有効に利用することができる。また、有機農業は、われわれの文化や農村コミュニティを強固なものにする。


GNH向上戦略の一環として有機農業を位置づける理由として以下のように指摘されています。
①人にも環境にも優しい
②生物多様性の保全
③持続可能な開発
④少量高品質の農産物の輸出による収入増
⑤コミュニティ性の維持

インドでは緑の革命以降、収量は増加したものの、農家は外部からの資材投入に依存するようになりました。肥料や農薬、種子を購入するために借金に苦しみ、自殺する農家が後をたたない。ブータンではインドにおける緑の革命が反面教師として示されています。

低投入型で環境負荷の少ない有機農業を推進すること、ブータン独自のクリーンなイメージを創出し、高品質な有機農産物を輸出していく、という戦略なのです。


というわけで、本当に有機農業がGNH向上に役立つのか。
指標を使って、実証しようというわけです。


それにしても、普及員の出張報告書に至るまで、政府の文書はほとんど英語で書かれてあるので、ブータンはとても調査しやすい国です。


■幸せを図るものさし、GNH(Gross National Happiness)

「農薬?使わないよ。虫を殺すのは罪になる。私たちは大地から食べ物を分けてもらっているんだから、虫にも半分わけてあげればいいんだ。」

「品種を変えたら収量が2倍になった。楽になったよ。これで今までの半分しか耕さなくていいのだから。」

ブータンで村落調査をしていると、よく聞く言葉でした。

「日本人は働き者だよね。なんでそんなに働くの?」
逆に、質問されるパターンも・・・vV

そう聞かれましても、答えに瀕する質問です。

頑張って働いて、お金を貯めてどうするのか?
アリとキリギリスで言うところの、日本人がありだとすれば、ブータン人はキリギリスです。
キリギリスは、働かず、冬が来て飢えて死んでしまうのだけど・・・
アリのように 働いて厳しい冬を生き延びるか、キリギリスのように人生を謳歌して終わるか・・・。


国勢調査でブータン人の幸福度は世界一。97%が幸せだと答えていると言われています。

忙しく働く日本人が不幸せで、のんびりすごすブータン人は幸せなのか?


「ブータンの生活どうだった?幸せな国だった?」
帰国して、いろんな人からよく聞かれましたねー。

こういう質問には、
「その人次第なんじゃない?」
と、返しています。

ちがう答えを期待していた人には、
なんだ、それだけ?つまんないの。と思われるかもしれませんが・・・


では、「あなたはしあわせですか?」
と聞かれたらどう答えますか?



東京大学社会心理学研究室(2010年)の調査によると、86.5%が「非常に幸せ」又は「やや幸せ」と答えたそうです。 
(Source:東京大学大学院人文社会系研究科社会心理学研究室&電通総研, 世界価値観調査2010, 2010年)


なんだ、日本とブータンはそんなに変わらないじゃないか。
と、思いませんか?


幸せか、不幸か、2択で聞かれると、「不幸だ」と答える人が多い国はよっぽど不幸なのかもしれないけど、どちらかといえば「幸せ」に〇するひとが多いのではないでしょうか。

二分論ではなく、幸せ度を点数で示した大阪大学社会経済研究所(2004年)の調査によると、アメリカでは8点が最多数の24%を占め、日本では、5点が25%、ブータンでも5点が36.8%で最多でした。ポジティブ思考か、マイナス思考か、国民性も影響するのだと思います。 
Source: 大阪大学社会経済研究所附属行動経済学研究センター, くらしの好みと満足度についてのアンケート, 2004年

これは、GNHの指標です。
  1. Psychological Well-being 心のゆとり
  2. Time Use 時間のゆとり
  3. Community Vitality    コミュニティの活力
  4. Culture 文化
  5. Health 健康
  6. Education 教育
  7. Environmental Diversity 環境
  8. Living Standard 生活水準
  9. Governance    ガバナンス


数値化して足していくのですが、この数値のとり方が、結果に大きく影響してきます。

どういうことかというと・・・


家庭・労働・環境・健康など40の指標を用いた幸福度の調査を行った法政大学(2011年)による、日本の都市別幸福度ランキング

1位    福井    7.23     
2位    富山    7.20     
3位    石川    6.90     
4位    鳥取    6.63     
5位    佐賀    6.55     
6位    熊本    6.55     
7位    長野    6.48     
8位    島根    6.35     
9位    三重    6.25     
10位    新潟    6.18     
38位    東京     5.38     
42位    京都    5.18     
47位    大阪    4.75    


過疎率の高い北陸・山陰の幸福度が高く、東京、大阪、京都など、都市部の幸福度は低くなっています。

日本海側に住む人は幸せで、東京に住む人は不幸なんでしょうか?

同じ状況は、ブータンの都市別の幸福度の比較調査でも明らかになっています。
 
ブータンの都市別幸福度ランキング(Center of Bhutan Studies , 2010年)
ハ 6.55
ガザ 6.42
ウォンディ 6.22
ブムタン 6.21
タシガン 6.15
ティンプー 6.14
プナカ 6.12
タシヤンツェ 6.10
パロ 6.04
トンサ 5.97
モンガル 5.79
ルンツェ 5.79
サムドラップジョンカル 5.70
ペマガツェル 5.61


西部が高く、東部、南部へ行くにつれて幸福度が低くなっています。
所得においては首都Thimphuが一番高いですが、幸福度が高いのはGasa,Haaなどの高山地帯。
そして、幸福度が比較的低いのがインド国境に近い南部の都市、Pema Gatshel, Samdrup Jongkhar地区。

町から山道を1時間歩かないとたどり着けないMarthang村
村に戻る途中の道で休憩~写真撮りますよーというと、ノリノリで手を振ってくれた。



先ほどの日本の都市別幸福度ランキングには、生活環境の項目に「持家率」が使われています。
この項目を追加することで、都会よりも田舎が当然有利になりますよね。
平均収入などは、逆に都会が有利になります。

どの指標を使うかが、幸福度に大きく影響する。
つまり、調査をする側の主観がはいってしまうのだ。

持家が幸せなのか?
アパートに住んでると不幸なのか?

それとも、おせっかいなくらい、近所の人から干渉を受ける人付き合いの濃い~コミュニティが幸せなのか?


それって人それぞれですよね?

・・・って、最初の結論に戻ります。
こんなに説明が長くなってしまうので、たいてい省略して「ひとそれぞれじゃないですか」
という答えで終わってしまうわけですが・・・ ^^



■廃村の危機にある農村のくらし

Morong村のDechen家についたのは夕方の5時でした。
薄暗いとうもろこし畑をひたすら歩く。
morong村のとうもろこし畑


畑の真ん中にある小屋には、部屋が3室。
1室はキッチン。ご飯は薪と竈で炊いている。トイレはありません。

ここは、農繁期のみ居住スペースとなる出小屋。
日本でも、かつて、畑のそばには簡易ベッドが置いてある集落もありました。
作物の収穫前後は、獣から守るため、寝ずの番をするのです。


家の玄関にはロープがずーっと奥のとうもろこし畑に続いていました。

そのロープはトウモロコシ畑に立てられた竹竿につながっています。
それは、夜、野獣にトウモロコシを食べられてしまわないように、音をたてて追い返すためにあるのです。


息子のDorji君が採れたてのトウモロコシを焼いてくれました。
例にもれず、バンチャン(地酒)がでてくる、でてくる!

7時には日も落ち、あたりは一瞬にして暗闇に包まれました。
電気はもちろんありません。

しーんと、静まり返った闇夜。
こんな静けさの中に身をおいたことがあったろうか・・・?

そんなことを思っていると、

「うほほほほーーーい!!うほおーおおお!!!!」

急に何とも言えない雄たけび声が!

はにかみながら、とうもろこしを分けてくれたDorji君です。

獣を追っ払うためなのだとか。
あのおとなしいDorji君がこんな大声を出せるとは!



夕方にみた竹竿が遠くの方で鳴っているのが聞こえる。
ロープは全部で3本あり、交代でこれを1時間毎に鳴らすのです。
寝れたものではありません。


夜なべ・・・とはことことで、畑を守るために一日中音をならしつづける・・・
この生活は、トウモロコシの収穫まで2か月続くといいます。

で、竹竿の効果のほどを聞いてみると、

「50%がいのししに食べられている。竹竿がなければ全滅しているだろう」
とのこと・・・。

2か月間寝ることなくいのししと戦い、得られるとうもろこしは半分・・・

幸せの村の日常は厳しいものです。

あさ、お粥を炊いてくれたDorji君。
幸せとは何か?聞いてみると、仕事をしていることが幸せなのだとか。
そんな彼はまだ16歳。

日本に生まれ育った私には、トウモロコシを育てるために2か月徹夜で番をするなんて大変に違いない・・・と思うものです。
でも、彼が幸せに思っているのは、家族一緒にこの仕事をしていられること。
家族で働くということは、日本にはあまりない日常かもしれません。
出稼ぎにいって、給料をもらうことが幸せなのか、家族一緒に食べるために働くのが幸せなのか。
人にはそれぞれの幸せのカタチがあるのでしょう。


"reliance on local wisdom, traditional farming methods, and freely available local materials"

ティンレイ首相の大事にする有機農業の効用。
それは、ないものを外国求めるのではなく、いまそこにあるものを活かすということ。それが有機農業のprincipleなのだと。




日本では蛇口から水が出るのが当たり前で、断水でもすれば市役所に苦情がいくかもしれない。
当たり前に思っていると薄れてしまう感謝のきもち。
 ブータンでは水は頻繁に断水するが、雨が降れば天からの恵みに感謝し、みなバケツを軒下に並べます。


雨が降ればバケツに水を貯め、洗車する

 食べ物をわけてもらっていることへの感謝。
生きていることへの感謝。


足るを知れば、充足度は高くなり、欲望が大きくなるほど充足度は小さくなる。
あるものに感謝し、在るがままに受け入れることが幸せの一歩なのではないでしょうか。

(つづく・・・)

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2014年1月25日

60年に一度花を咲かせる竹に想う、生きるということ。

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竹の花をみたことがありますか?
イネ科だけに、稲にそっくりです。

竹の仲間には、モウソウチク、マダケなど、いろいろな種類がありますが、花を咲かせるのは60年から120年に一度だけ。
その幻の実はお米と同じような味がするのだとか。


Source:Bamboo Garden

生命には周期があります。
タネから芽がでて、成長して、子孫を残し、老いて、枯れていく。
ニンゲンでも同じです。
竹の周期は、品種によって違いますが、60年から120年といわれています。

このことを最初に知ったのは、京都の竹工芸の職人さんを訪ねたときでした。
マダケが真っ白い花を咲かせるのは120年に一度。花を咲かせた竹は、一斉に枯死する。
そのときに、茶色いシミができるのだが、その竹を「シュミ竹」と言って高値で取引されるというのだ。

120年に一度しかとれない竹。古民家の一部として、眠っていることも多い。
古民家が解体されるとき、竹材商は、こぞって建材として使われていた竹を見に行くのだ。

囲炉裏でいぶされた独特の味わいのある「煤竹」。
お茶の世界では、風情あふれる趣の有る道具として重宝される。


竹は、切っても、切ってもたけのこが伸びてくる。
根っこで増える植物。ふだん、タネを残すことはない。
なぜ、60年に一度、花をつけるのだろうか?

根っこで増えた場合、遺伝的には単一になる。異なる血が入る余地がないわけだ。
環境に変異が起こったとき、生き残るには多様な遺伝子を獲得する必要がある。
花を咲かせ、遺伝子を更新し、自らは絶えて行く・・・

そんな話を聞き、ふと、竹の事を思うようになった。
人の人生も80年ほどの周期で終わる
でも、きっと、それは、終わりじゃない。
人が生きた証はどこかに残る・・・
遺伝子の中に記憶は受け継がれていくのだ。


短い人生の中で何を残せるだろうか。
膨大な遺伝情報の中には、大量に意味のないコードが書き込まれている。
もしかしたら無意味なコードは何かの時に切り札になるものかもしれない。
すべてが、つながっていくために、すべてのものが必要とされている。
この世にいらないものなんてないのかもしれない。

竹の花は生き残るために巧妙に仕組まれた自然の英知。
バラや椿のような派手な姿でもなく、風になびいて、しなやかに曲がる。
それでも、すーっと一本の芯が高くとおっている。

何でみとめられないのだろう?
そんな傲慢な考えがふと沸いたとき、黙って目を閉じて竹林を思い浮かべる。
すると、心の中に静かな風がそよぐのが見えるようになる。

竹のように生きよう。
しなやかに、柔軟に、でも、空高く芯を通す竹のようなニンゲンになろう。
60年後、花が咲いたらそれでいいじゃないか。

竹がおしえてくれたこと。
暮らしへの向き合い方。

植物はほんと、いろんなことを教えてくれる。


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ポーランドでタネの国際フォーラムEkoSeedForum(3月20日~22日)

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有機種子、作物の多様性をテーマとしたタネのフォーラム、EkoSeedForumがポーランドで開催されます。

有機農業に適した種子の生産や、昔の古い品種の保全、多様な作物を文化のひとつとして守っていこうという趣旨で開催されるこの欧州会議には、ヨーロッパ各地でタネの育種・保全にとりくむ団体が集まり、今後の連携を模索する。

オーガニック種子の生産者、農家、種苗店、多様性保護にかかわる団体、研究者、コンサルタント、個人育種家、シードセイバーなど、興味の有る人はだれでも参加できる。

英語、ポーランド語、ドイツ語、ロシア語の4ヶ国語通訳あり。

プログラムは下記のとおり

主催:Ekoconnect
共催:EcoPB, IFOAM EU, GLS, kultunsaat, bingenheimer saatgut, Agrolink, save foundation, Forum Rolnictwa Ekologicznego, seed guardians

トピック1.オーガニック育種
・なぜ、オーガニック育種が必要なのか?
・育種家のプレゼン ・ネットワークづくり

2.作物の多様性
・昔ながらの多様な品種を流通させるには?
・オーガニック育種によるタネの活用について

3.オーガニック種子の生産
・タネを生産する農家による国際的なプラットフォームづくり
・多様な品種へのアクセス

詳細はEkoconnectのページ
プログラムのダウンロードはこちら

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2014年1月13日

氷見で自家採種の研修会

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以下、氷見で採種の研修会をされているというニュース。
北日本新聞ウェブより転載です。

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自家採種の基本学ぶ 自然農法普及へ研修会
2014年01月11日

農薬や化学肥料を使用しない自然農法や有機農業の普及を目指す「氷見有機の里づくり協議会」(土合将元会長)は11日、氷見市役所で自家採種の研修会を開いた。山口県で自然農法に取り組む中野茂樹さんが講師を務め、自分で栽培した野菜から種を採る自家採種の基本を伝えた。  

同協議会は、自然循環型の農業を通して心と体の健康を提案しようと市内の農家を中心に昨年10月発足。この日は会員を含め自然農法に興味を持つ市内外の約40人が受講した。

中野さんは自家採種の目的として「採種を繰り返すことで、栽培地の気候風土に適応させることができる」と説明。種子を作るのに必要な条件や土作りの基本を紹介し「F1種(交配種)でも採種を繰り返すことで固定種になる」と話した。  

参加者は残す種の選別法やF1種の見分け方などを熱心に質問し、自然農法への関心を高めた。
======================================

たねとりの勉強会を開きたいと思いつつ、あまり「タネ」を前面に出してしまうと、引かれることもあり・・・。

とりあえずは、裾野を広げるために、在来野菜に親しんでもらう「やさいのがっこう」を始めました。

本当にやりたいのは、たねの保存技術や、「手だね」の民俗文化を学び合える教室なので、こういうニュースを見るとうれしくなります。





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2014年1月12日

チョロギ(長老木、Chinese Artichoke)

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みなさん、おせちにはチョロギを食べましたか~?

おせちでは酢漬けにしますよね。
長老木と書くように、とっても縁起がよさそうな新年にぴったりな食べ物。

いただきましたので、煮物にしてみましたが、ソテーしてもウマいです。


以下、Wikipedia解説
塊茎は長さ1~3cm程度の巻貝のような形をしており、泥を落とすと白い。この塊茎を塩漬けにしたり茹でたりして食べる。ユリ根に似た食感、生姜のようにピリッと辛い味がする。塩漬けの場合、4~5日ほど漬けた後に梅酢やシソ酢に漬けて赤い色をつけることが多い。この赤く漬けたチョロギは、正月の御節料理によく用いられる。御節料理ではそのまま単品として用いられるほか、黒豆を煮たものに添えて供されることも多い。その他の調理法としては、天ぷら、吸い物の具、祇園漬けなどが挙げられる。

面白いことに、日本では、チョロギは、ユリ根に例えられますが、海外では、アーティチョークに例えられているのですね。

チョロギの英語名は、Chinese Artichoke 中華風アーティチョークで、
キクイモは、Jerusalem artichoke エルサレムのアーティチョーク??

アーティチョークとキクイモは、キク科ですが、チョロギは、シソ科の植物。
似てるのは姿、形ではなく、味のようです。

シソ科といえば、葉っぱや穂を利用しますが、チョロギは、地下がこんな感じになってます。






確かに、ゆり根というよりは、
ホクホクした芋のような味がする。


塩ふって、バターソテーにしてもおいしいだろうなぁ~。

ちょいとこんがり、オリーブオイルで素焼きに。
これが、ぴったりでおいしかったです。

オリーブより、ごま油がよかったかな。


2014年1月11日

年末年始6日間のタネ合宿!

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ごあいさつがおくれましたがあけましておめでとうございます。

今年の年末年始は、9連休でしたね。
いかがお過ごしでしょうか。

思ったより、雪も降らず、暖冬でした。
篠山の古民家をお借りして、タネ仲間と6日間のタネ合宿をしてきました。

いろんな野菜の食べ比べをしたり、今後の活動について話し合ったり、
6日話し続けてもまだ話したりないくらい、タネ話で盛り上がりました。

古民家「タネノイエ」での生活

勝手に名づけた「タネノイエ」
冷蔵庫の中身はタネだらけ。

「いやー、ちょっと面白い女子たちがいて、え?何がどう面白いって?
たとえば、トランクの中に、タネがごろごろしてたり、
タネ専用に冷蔵庫をもってたりする子たちなんや」

私たちの紹介のされ方はこんな感じでした^^;
まぁ、確かに、そんなもんです。
タネの面白さが伝わったかどうかは別として・・・
興味をもってくれている人は増えてきたなーと感じているところです。


タネノイエ庭

在来野菜の試験栽培を兼ねて、エディブルガーデンを作りたいと思いまーす!
関西圏あたりで、在来野菜やタネとりに興味のある方、勉強会&合宿のメンバー熱烈募集中です!!イベント情報希望される方はぜひメッセージください。


在来野菜のキッチン☆ラボ

いろんな種類の野菜たちを縦に切ったり、横に切ったり。実験が始まりました。

辛みのある山カブ、みずみずしい金町子カブ、根っこの部分は土の味。
繊維を断ち切るようにカットするだけで香りが変わる。

いつもは品種の食べ比べしてますが、今回は、プロの料理人が参加してくださったおかげで、同じ大根を違う切り方で味見したり、部位による使い方を考えたり、とても勉強になりました。

土井自然農園より届いた野菜たち


サトイモの食べ比べ。
モンゴル料理を食す

モンゴルにも雑穀料理があるのですね。
アワを炒って、お茶に入れて飲んだり、八宝粥というお粥があったり、
乳酸菌をつかった発酵食など、食材の使い方が面白く、
勉強になりました。




野菜探索隊、始動!!

タネノイエでの在来種栽培試験の前に・・・
まだまだ山間部で眠ってる野菜の掘り起こしから~
ちょっとづつ・・・

テダネが伝わっているのは、ほとんどが、80代、90代のじいちゃん、ばあちゃん。

ことしの目標。
テダネが残っている間に、なるべく多くの方とお会いし、聞き書きを進めること。
いろんな人との出会いが楽しみだなぁ。
そして、タネとの出会いも・・・

というわけで、

今年もよろしくお願いします。

 ===============
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2014年1月8日

ブータンの山村集落へ農と暮らしをたずねて・・・(5)ミルクロード~牛乳のとおる道

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早朝。
静かな村のいつもの朝。
ヒマラヤ山脈の麓、Deothangの町に、 行列ができていました。
牛乳の配達やさんが来ます。

牛乳と言っても、日本のように、瓶で来るわけではありません。
ミルク缶を積んだトラックが通るのです。



■ミルクロードの旅へ

はじめて、ミルクバンを見たときは、どうやって牛乳を購入していいかわからず、ただぼうぜんとしていました。

「ミルクボトルを持ってないの?ペットボトルでいいからもってきたらいいよ」
と、運転手のおじちゃん。

Deothangの町を、端から端まで集落をまわって牛乳を集め、 買いたい人に販売もしながら、州都、Samdrup Jongkharのミルクショップへ向かうという・・・

「ぜひ、お手伝いさせてください!」

早朝から集落の様子が見て回れるなんて、これは、同行させてもらうしかない!
頼み込んで、次の日、3時間にわたるミルクロードの旅に出かけることになりました。
お手伝いといいつつ、ほぼ見てるだけだったわけですが^^

せっかくなので、仲良くなった林務官のお兄さんからGPSを借りて、地形を記録しながら、牛乳マップをつくることにしました。

午前6時、いざ出発。
5つの集落をまわります。



村に入ると、村人たちがミルク缶をもってどんどん集まってきます。
30分前から待っている村人たちも。

『いくつの町を越えていくのだろう。明日へとつづく、この道を~♪』

ついつい歌いたくなってしまう風景が広がっていました。








朝6時に出発した回収は、9時にようやく終わりました。
舗装されていない狭い道が連なる集落の移動。
この間、約60キロしか走っていなかったのに、3時間もかかりました。


あつまった牛乳は、車で1時間先にある州都Samdrup Jongkharへ持っていきます。
10時am
ここでも、開店前から長蛇の列ができていました。

みなさん、ペットボトルをもってきています。
回収したばかりのミルクをいれてもらうのですね。

Samdrup Jongkharの牛乳店


■牛乳の加工技術と伝統的流通システム

ところで、せっかく買った牛乳が、次の日にはヨーグルト化していて驚きました。
冷蔵庫に入れておいたにもかかわらずです。

「煮沸してなかったでしょう?そうなるの、当たり前でしょ?」

そんなことも知らなかったの、とばかりにルームメイトに言われてしまいました。
日本の牛乳がいかに、調整されているかよくわかります。
まったく手が入ってないと、すぐに沸騰させてから保存しないとだめになっちゃうのですね。

日本の牛乳では難しいかもしれませんが、ブータンの一般家庭では、チーズやヨーグルト、バターを作ります。
ヨーグルト製造中

バターを保管しておく民具
ブータンのチーズは、石のように硬い。旅行のおともに。


町と町をつなぐ街道を行くと、途中で商店や、牛の休憩所が見えてきます。
街道を行きかう人たちを観察しながら、売店でお茶をのみながらひとときを過ごすのが私はとても好きです。

同じように、牛たちも、ちょっとした小屋でお休みできるようになっています。

そして、牛のたまり場は、乳製品のバザールでもあるのです。
まるで、日本でいう宿場町とか、関所のようです。

街道でたむろしている牛たちがいれば、牛飼いからチーズやバターを購入しましょう。





■在来の牛とジャージー牛

集落をまわりながら、今日は誰がいくらとれたか、帳簿に記録していきます。
Deothang Milk Marketing Group(DMMG)は、牛乳の組合です。

仔牛の購入のために資金援助したり、飼料の提供、技術指導、牛乳の集荷、販売を行っています。牛乳が売れた収入から、飼料代を差し引かれた分が、農家さんに配分される仕組みです。

DMMGの総会にて。真剣に議事を聞く組合員。

種の話と同じで、家畜にも、在来種と改良種の話がでてきます。

にわとりの改良種は、 卵を産んでもあたためる習性がなくなってしまっているので、自然に孵化できない。

在来の牛は、山の中でも元気に走り回るけど、牛乳の収量を高めた改良牛は、デリケートですぐ怪我をして、治療にお金がかかる。
そして、仔牛を買うために、組合から借金をしなくてはならない。

牛乳の収量が増え、現金収入が見込める改良種を借金してでも導入すべきか。
自分たちの消費するぶんだけでよいならば、放牧しておけばよい手のかからない在来の牛を飼うほうがメリットは大きい。



在来作物と同じく、売る用と、消費する用、使い分けている家庭も多い。

組合で購入を進めているジャージーが約60%を占める。
つづいて、Nublanが19%、Jatshaが13%。Yangku4%、Jaba3%とつづく。


姿を消す在来作物と同じく、在来の牛や鶏も姿を消しつつあります。
かつて日本もそうであったように・・・。
あと数年もしたら、ホルスタインやジャージーだらけになってしまうのでしょうか。

一つ言えることは、在来牛やにわとりの自然にもっている本来の能力や暮らしの中でともに生きてきた文化的意味を再評価していこうという動きも広がりつつあります。

お金だけではない、もう一つの指標、GNH。
有機農業や在来種の生活のなかで守っていくこと。
それが、幸福のひとつの条件として位置づけられているのです・・・

在来の牛


最後に、
Deothangに戻ってきたミルクバンは、川へ向かいました。



一日のおわりに、ミルク缶を洗うのです。

おつかれさまでした。
ありがとう。



(つづく・・・)

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2014年1月5日

ブータンの山村集落へ農と暮らしをたずねて・・・(4)伝統医術を学んだ少女

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「チサト~!こっち、こっち!これは、牛の胃薬につかう草、これは、マラリアのお薬、こっちは血止め草。私たちの家の庭には、いざというときに使えるお薬をたくさん植えてあるのよ。」

そこは、ブータン王国の東の果て、無医村の薬草ガーデン。
医者のいない村では、いざというときのために、薬になる植物が家の周りに植えられています。
そう、シャーマニズムが今に生きている―。



■伝統医術を学んだ少女、トゥルシ―との出会い

秘境ブータンでも、特に辺境の無医村の村に生まれたトゥルシーと出会ったのは、北インドのオーガニック農場、Navdanyaでした。

ブータン政府の国家100%オーガニック計画で、選ばれたモデル農家20名とともに、Dr.Vandana Shivaの研究農場で2週間ともにすごし、同じ年頃のトゥルシーとは仲良くなったのです。

「ブータンに来たら、ぜったい、Bantarに来てよ!」

そういってお別れしてから2ヶ月がたっていました。


ブータン東部のはしっこ、Bantarは、ブータンの中でも、さらに「特別入域許可書」を取得しないと入域できない辺境の地。

Bantarからさらに、東へ行くと、車道がなくなる。
歩いて3日かかるLauri地区には歩いてしかたどりつけない村が点在しているのです。

歩いてしか行けない農道を記した地図。雨季は冠水のため、道がわからなくなることもあるという。

■野生のゾウがでる無医村

「チサトはだめだ!とっても危険だから。ぼくたち政府の農業普及員も、銃を持った軍の護衛団と一緒にしか行動できない。野生のゾウやトラが出るからね。」

野生のゾウがいかに凶暴で、何人ゾウにやられてるか。
いかに、ゾウからのがれるか。
川に飛び込んではだめ、ゾウの方が泳ぎが早い。
木に登っても、なぎ倒される。
ゾウは突進力があるが、ジグザグに逃げれば助かる可能性がある。
生きることは、自然との闘いなのである。


そんな話を聞いてると、動物園のゾウしかみたことない私には、想像できない世界でした。

物資輸送のために軍で飼っているゾウ

そのジャングルを、3日間かけて歩く。
途中、ジャングルの中にある村で野営する。
Lauriまで行くのはあまりに危険、とのことであきらめました。



選挙が始まって延び延びになっていたBantarへの入域許可申請がようやく通り、
2か月後、いよいよトゥルシーの家にたどりつきました。

「チサト―!次はあっち!特別な庭があるから。それから、下の村には畑があるから見て行ってね」

その間、電話で何度もやりとりしていたトゥルシ―は、おおはしゃぎで庭を案内してくれたのです。
きっと、私の目も子供のように、トゥルシ―にまけないくらいキラキラしていたと思います。
もっと聞いていたい!全部知りたい!



なんと、トゥルシーの出身は、行くことをあきらめた3日歩かないとたどりつけないという村なのでした。

電気もなく、車道もない。病院も、スーパーもない。
食料も、医術も、ほぼ自給自足の閉ざされた村。

そこでは、薬草師やシャーマンがいて、病気になったとき、薬草の処方やまじないをしてくれる。そこで、トゥルシ―は、薬草を学んだといいます。



ヒルにやられて血だらけになっていた足を手際よく治療してもらいました。

日本では、川や池にいるイメージですが、舗装されてない道なき道を数10分も歩いていると、ジーンズの上から長靴をはいていようが、どこからともなく、そいつは入ってくるのです。

一緒に農村をまわってたカナダ人の研究者は、パンツの中に入ったヒルにお尻を吸われていたというから笑い話・・・いや、怖い話でした。

「牛の鼻からヒルが入ると、内臓の血を吸ってどんどん大きくなって、そして、牛が死んでしまうんだ。」

ヒルよ、なんと恐ろしい生き物・・・

ヒルにかまれた足の治療に使う薬草

■庭の薬箱

庭の薬草たちは、言われないとそれと気づかないほど、本当に何気なく生えている。
薬草師の村では、家庭菜園に加えて、いざというときのために薬になる植物が家の周りに植えられています。まさに、天然の薬箱なのでした。 

中でも、とりわけ重要視されているのが、万能薬とされるトゥルシ―。
日本でもハーブとして育てている人は多いですが、庭の中でもちょっと台座のような盛り上がったところに植えられたり、神棚に飾られたり、神聖なものと扱われています。

Trusi

これは、Lanilu ラニルー。日本でいうと、アカネ。
「茜色」というけど、ブータンでも髪染めや染色に使われる草。
Lanilu アカネ草

中国や東南アジアでもそうですが、赤が持つ意味は、祝いの色であったり、魔除けの色であったり、「火」「太陽」「血」の色を連想させるようです。
日本でも、赤いアズキや消し炭が邪気払いとして使われ、インドでは牛の角を赤く染めて魔除けにします。

ブータンでは、実態がよくわからないけど、村にはBoxiボキシーと呼ばれる魔物がいて、寝ている時にやってくると言い伝えられています。Laniluは、Boxiにかまれたときの治療につかうのだそうです。

狐につままれたようなお話ですが、本当にかまれたことがある、という老人は、朝起きたら黒い歯形がついていた話をしてくれました。

白髪のおしゃれ染めにも使うというアカネ草。



これは、カレーに入れるという野草。胃薬にも使われると言います。

Zala-mom-baaring (Crinum amoenum Rox)
used for making curry. It is good to treat gastric syndrome.
Leaves for syphilis, leprosy, skin diseases, fever, bowel complaints, rheumatism and nervoursness. Also used as insecticides.

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現地語(学名
村人の知識
専門家からの聞きとり
※英文は参考のため原文にしてます
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これはマラリアの治療薬。根をすりつぶして煎じて使う。
血圧を下げる効果も。
Rauwolfia serpentina (Rauwolfia serpentina)
grinded roots mixed with water is used for malaria treatment. Also, good for stomach ache
Sedative, hipnotic, reduces blood pressure
これは、Menkuと呼ばれる、牛の胃薬。
根っこをしぼって、液体を飲ませる。

Menku (Crinum amoenum Rox)
treatment for digestion problems of cattle.
Bulb used in rheumatism and leaf juice for ear ache purposes


これは、Lantana ランタナ。
すりつぶして、農薬の代わりに作物にまく。



納屋には、自家採種した種が保管されていました。

ぶんどう豆

とうもろこし畑の下には、豆や、じゃがいも、かぼちゃが地を這っています。
にわとりも放し飼い。


牛小屋の屋根でかぼちゃを収穫。
とってもエコです。


ブータンの大学には、医学部がありません。
医者になりたければ、インドに留学しないといけません。
ブータン人の医者は数少なく、私が滞在していた村でも、インド人の軍医しかいませんでした。

マラリアになったらどうすのか、狂犬病がでたら?
村人が、狂犬病で死んだ、毒蛇にかまれた、なんて噂もちらほら聞こえてくるので心配でした。

首都の大病院までバスで3日。
インド人の軍医がいる近くの町まで歩いて1日。
どう考えても、マラリアにかかってしまったら、歩いて町まで行けるはずがない。

あのマラリアの薬という植物の根っこは、青色の汁が出てたな、
それとなく、魔女の薬っぽいけど、本当に効くのかな。

生病老死も天の定めとするチベット仏教の考えでしょうか。
結局のところ、いくら考えたって、心配したって、結論は、
「所詮、なるようになる、なるようにしかならない」のである。


マラリア、狂犬病の区域に入りながら無医村の集落での滞在で、何とも知れない「鈍感力」がついた。「何が起きても、すべてをありのままに受け入れて生きよう」という気持ちになったのです。
それは、はたして、あきらめかもしれないし、 どうにもならない自然の理に対する信奉かもしれなかった。


(つづく・・・)
チベット医学の神様
首都ティンプーのメンツィーカンで処方された薬



※ブータンの手だねをたずねるシリーズでしたが、話が広くなってきたので「山村集落を訪ねて」にあらためました。

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