2016年5月29日
在来種のたねとり菜園づくり(7)麦刈りのつどい〜麦の起源をたどる〜
約30品種のたねとり麦畑
先週に引き続きの麦刈り。
今回は、10品種収穫できそう、とのことで、twitter, facebookでお手伝いに来てくれる方を募集してみたところ、石川、丹波、熊野、岡山など、遠方からのお問い合わせもいただき、麦をテーマに各地から集まったメンバーですが、実は共通の知人がいたり、故郷が近かったり、思わぬ共通点がいろいろあったりして、話がはずみました。
今回は、全国の農村をまわり、麦の種を集めてこられた土井自然農園さんが麦の解説に駆けつけてくれました。
それぞれの麦がどこでどんな風に育って来たのか、適する土地は?成熟のスピード、加工適性などなど、麦の基礎知識を勉強しつつ、種をシェアする会になりました。
そうして、自分が育てたい麦のタイプにあったものを選んでお持ち帰りいただきました。
前回記事:
在来種のたねとり菜園づくり(5)30品種の小麦の成長
なぜ麦にこだわっているのか?
これだけの種類の麦を育てているのはなぜですか?とよく聞かれます。
お米の消費量が900万トンに対して、麦の消費量は、634万トン。米の2/3を消費していることになります。
米の自給率についてはいろいろと議論されているし、米粉を使う運動もあるけれど、これだけ消費されている麦の国産率は約10%。9割が輸入されていて、うち大部分が北米産です(アメリカ60%, カナダ22%)。メリケン粉と言われる理由がわかりますよね。
でも、その起源はすごく古くて、古事記にも出てくるし、古代のパンのような焼けた麦のかたまりが遺跡から出土しています。縄文人もパンを食べていたのでしょうか。
戦前までは、麦は当たり前に身近にあって、「のりやけ」とよばれるせんべいを作っていたり、麦焦がしとか、はったい粉をつくったり、ほうとうや、まんじゅうなど、麦は家庭料理の一部でした。
麦の収量が伸びてから世界の人口が圧倒的に増えたのですが、その「緑の革命Green Revolution」の親になった農林10号(ノーリン・テン)は実は稲塚権次郎さんという人が選抜した日本の品種だったりする。
メリケン粉なんて呼ばれだしたのは最近なのに、あまり知られてないのがさみしい。
パン用、麺用、みそ、しょうゆ用、チャパティ用、などなどいろんな用途の麦があります。
パン用、麺用、みそ、しょうゆ用、チャパティ用、などなどいろんな用途の麦があります。
何で決まるかというと、タンパク質含有量だったり、ガラス質、アミロース、アミロペクチンの割合だったり。それから、アルカリ性の土地何か、酸性の土地なのか、降水量はどうか、日長はどうか。目的とする用途や環境に適した麦を探して栽培する必要があります。じっさいに成長を見てもらいながら麦に親しんでもらえたらなあと思っています。
ムギの品種と伝播の物語
作物の伝播のルートには人の移動、交易ルート、巡礼・参勤交代などの道、歴史上のいろいろなできごとや、もっと身近なところでは、村同士の姻戚関係、祭り、信仰儀礼などが密接に関わっています。
麦についていうと、日本の古い品種はシルクロードを経由して渡来人がもたらしたとされています。麺が大好きなシルクロード諸国を旅し、日本にもたらされた麦は、グルテンの量は中力粉が多くて、麺に適したものが選ばれて伝わりました。
弥生時代は、もっぱら飼料として栽培されていたようです。
西洋の粉食文化に対して、日本の古代食は、粟、黍、稗、稲など、粒食がメイン。
粉にひいて食べるというのは、手間のかかることであり、しとぎを神様にそなえたり、お祝いに餅を食べたり、ハレの日の料理でした。
江戸時代に普及した石臼のお陰で、調理方法に幅がでてきます。
お好み焼き、うどん、もんじゃ焼き、まんじゅう・・・石臼のお陰で江戸時代に開花した粉物文化(こなもん)です。
伝わっていたのがもしパン小麦だったら、もっと違う粉物文化になっていたでしょうか?
一方で、粟、黍、稗、シコクビエ、これぜんぶ英語で言えばmillet。特に区別していないのです。呼び名の多様性を見ていくと、その文化が何を大切にしているかよくわかりますね。
大見新村でのパン焼きWS |
麦の品種いろいろ
麦の畑を実際に歩いてもらいてもらいながら、成長の違い、鳥に食べられやすさ、などなど見ていきます。
麦の基礎知識についての解説も。
資料:麦の基礎知識 |
もちむぎ。古くからの品種には、各地で団子用にもち麦がたくさんのこっています。
紫色がきれいなもち麦 |
鳥が集中してついばんでいる麦も。
となりの麦は全然大丈夫なのに、この麦は、魚の骨のように繊維のみになっても、まだこっちばかりによってきます。(ちなみにこれはビール麦)
アオバというパンにしたら美味しいと絶賛されたコムギには見向きもされず・・・。
鳥が食べる物は人間にとっても美味しいのか、できることなら鳥にインタビューしてみたい、という議論でもりあがりました。
無農薬、無肥料の自然栽培ですが、スペルト、黒小麦、ヒマラヤなど、海外の古い品種は、出だしの成長はどれよりも早く、旺盛だったのですが、日長時間が日本とは違うからか、出穂がとにかく遅い。
二毛作をするには成熟の遅さは致命的。田んぼの裏作に適した、早生で、起源ができるだけ古く、病害にも強いもので、それぞれ麺用、パン用、チャパティ用、など、用途別に選抜して残していけたらと思います。
チャパティ用のインド麦 |
30種類も植えて、交雑しないのですか?ときかれるのですが、麦の交雑率は数%。
それよりも、収穫時にどれだかわからなくなってしまう、人為的交雑の方が確率高いです。
混ざらないように、軒下にはざかけしていきます。
今回は、どれが自分たちの目標と小麦に近いのかわかり、実験してみてよかったです。
麦刈りのあとは、田植の予定 |
むぎとり隊随時募集中
以上、どんな麦をつくりたいのかに合わせて、適した麦をみんなで選ぶという実験でしたが、また、今年もやりたいと思います。
岩倉の畑では、今年選抜した種をもとに、今度は加工用にエリアを広げて、数種類にしぼって集中的に栽培する予定。
次回は、大見村の菜園をお借りしてやるかもしれません。麦隊は随時募集中!
大見村の記事はこちら。
前回記事:
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