2013年2月13日

地域ぐるみで在来種を育てる参加型育種とは?

2 件のコメント :

Participatory Plant Breeding 農家参加型育種

山間部で代々自家採種でひっそりと受け継がれている在来野菜が消えつつあるのは日本だけの問題ではありません。在来野菜の保護にはヨーロッパでも力を入れていて、私が勉強していたオランダでは、社会に開かれた農業研究所を中心に、農家と大学、加工業者、消費者を巻き込んだ<Participatory Plant Breeding 参加型育種>が盛んに研究されています。

オランダでは、農業普及センターがあるものの、カウンセリングは有料。日本のように、タダでなんでもサービス受けられたりするわけではないので、農家も自分で研究するんです。Hobby Breeder ホビーブリーダーと呼ばれる、個人育種家もいるほど。

さて、どうやって進めるかというと、消費者や加工業者が求める野菜の形質を知るため、母本選抜(残したい特徴をもった野菜を畑から選抜し、種取り用に移植する作業)を地域住民みんなで一緒にやります。
そして、研究者は採種のやり方をワークショップで農家や地域の人たちに伝え、種取りをやるんです。

どんな種がほしいか、残していきたいか、みんなで決めて、みんなで選抜して育てていく。
これ、面白いとおもいませんか?

【参考文献】
ワーゲニンゲン大学&ルイスボルク研究所 Organic Breeding in Europe (英語)
BioKennis ウェブサイト (オランダ語)


On-farm extension 地域ぐるみの種とり農家育成

常々思うこと。なぜ、在来種の種が趣味レベルの自家採種で終わっているのか。

発芽率が悪い、 農家のニーズに合ってない、
つまり非効率なんです。

種苗会社が作っている種を買った方が、ちゃんと選抜されていて、 発芽率もよく揃いがいい。
固定種の種は、趣味レベルで交換するにはいいけれど、発芽率悪く、個体差があまりに大きいと、生産者はたまったものではありませんね。

これが広まらない大きな理由。
ちゃんと、たねとりを専門的にやる農家さんを育てない限り、在来種の保護は無理なんです。

採種の目的は
①流通ベースに乗せる
②趣味レベルの採種仲間を増やす。

どちらかによって、 ずいぶん変わってきます。
その種をとりあえず残したいのか、消費者に広めたいのか。
これ、ちゃんと分けないといけません。


もし①の積極的に広めていきたいのなら、流通に乗せるだけのレベルが問われます。


オーガニックの種を作っているインドの事例で言うなら、
まず、「数人の農家が集まって、生産者グループを結成→種専門の農家を育成→作物を生産する農家は種農家から種子または苗を購入」
と、地域の中で役割分担していました。

インドの場合、現地の価値からして種が高価であったことから、このような手法が広まったという事情もありますが、餅は餅屋で、やはり専門的な採種農家があった方がいい。

日本には、たねとりを専門的に学べるのは、自然農法国際開発研究センターしかありません。
普及センターや試験場は在来種の研究をしているところは少ないです。
オランダのParticipatory plant breedingに近いことをやっているのが、広島県農林振興センター
ここの取り組みは、地域で種を共有するシステムができていて、普通の研究所にあるシードバンクとは違って面白いなぁと思います。

現状で、在来種の種に決定的に足りていないのは、種苗検査が十分でないこと。
これがしっかりできていないと、種を購入した人が、あれ?ここの種、ぜんぜんだめじゃん、二度と使わないぞ、となってしまうわけです(現に、有機農家さんからこういう声がたくさん出てます)。
発芽率、含水量、はまだ簡単ですが、活力検査、純潔度検査、ウイルス検査、個人ではとてもできないですよね。
これについては、種苗検査の専門機関があるのですが、また改めて書きたいと思います。


②の目的でいけば、地域の中でたねとりを広めていくことが大切。


農業普及手法には、研究所に農家さんを招いてやる方法と、実際の農家の圃場で研修をやる方法があり、地域の農家さんの圃場でやる研修を<On-farm extension>と呼んでいます。

元パタゴニアJohn Moorさんの(社)Seeds of Life(高知県)でもワークショップを開催されています。地域の中にこのような種取りが学べる学校のようなものがあればいいなぁと思います。


ちなみに種の保存方法については<In-situ conservation(域内保全)Ex-situ conservation(域外保全)>があります。
つまり、種をジーンバンクのような遠く離れたところに集めて保存するのが後者、そして、地域の中で保全していこうというのが前者。(生物多様性保全分野で主に使われる用語ですが・・)

ジーンバンクだと、それがどう育てられ、伝えられてきたのかわからなくなります。物語は消えてしまい、残すべき価値は薄れてしまいます。


生きた種を保存していくには、理想は地域の中で 興味を持った農家さんの圃場や学校の敷地、公民館などでたねとり農場を作れたらいいなぁ。

・・・というのが今後の私の目標であり、ライフワークにしていけたらなぁと思います。


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2 件のコメント :

  1. べにや長谷川商店 長谷川清美2014/01/05 16:59

    北海道東部の遠軽町で在来種の豆を販売していますべにや長谷川商店の長谷川清美と申します。たいへん参考になりました。在来種の豆を流通ベースにのせることの難しさを実感しています。種の確保がまず大変なのでタネ取り農家は欠かせないと思っていますが、年寄り以外に採取技術をもつ農家が少なくなんとかならないかと思案中です。一度広島へうかがいご意見うかがいたく思います。
    べにや長谷川商店
    長谷川清美

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  2. >長谷川さん
    コメントありがとうございます。いつもfacebookのページ楽しく拝見しています。
    最近、種とりをやっていきたい若い農家さんが増えてきているようで、ブログを通じて時々連絡をもらうことがあります。自家採種のタネを交換できる農家さんも多く、これからがとても楽しみです。
    ただ、残念ながら、在来種の野菜を流通にのせるのは難しく、売るための野菜(市販のタネ)と、自家消費用(自家採種)の野菜に分けて生産をしている状況です。
    もし、販路が確保できるのなら、採種をやりたい就農者は多いと思います。少なくとも、種とりを学びたい人は多いので、技術をつないでいけたらと考えています。
    それでは、また、facebookの更新たのしみにしています。
    前田

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