2014年8月11日

農ある暮らしを訪ねる旅(6)静岡葵区の焼畑を訪ねて

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2泊3日で静岡市葵区の焼畑を見に行ってきた。

その昔、神事で天に捧げたのは御贄と木綿(ゆう)。
家はなくても何とかなるけど、
食べ物と着物はなくては生きていけない。
それを神様に捧げ、祈った。

はるか昔。火の制御を覚え、ヒトはヒトとなった。
畑は火の田と書いた。焼かない家庭菜園は、畠。
水田が広がったのは最近のことで、
奥静のような山里では、田はほとんどなく、焼畑が行われていた。
焼畑は、地力を高めるとともに、雑草や病害虫の発生を抑える。


さて、葵地区は、一つの地域で数十種類の雑穀が残っている非常に珍しい地域。

まっ黄色の胡瓜、
木の実や原種に近いアズキ、
レーズンのような小さな柿はおやつ。






中でも、神事に使われる食べ物がとても興味深い
イワナの腹にサカアワと呼ばれる粳粟を詰めた捧げものが伝えられている。

日本に残っているアワはほとんどがモチ種だという。
アワ餅を作るモチ種とちがって、ご飯の量増しにつかったウルチアワは、
米が簡単に手に入る今では必要のなくなったもの。

神事にのこるウルチ粟は珍しいそう。

いまだに祠は女人禁制。

神事を受け継ぐのは男性だったのだ。
女性は入れない祠の前に、採種用の粟が隔離されている。
ここで採種されたタネが当番の家に配られ、祭事用のアワを収穫するのだ。
これがその採種ほ場なんて、言われないと気づかないところにある。




畑には、アワだけでも数種類。


ネコアシは、穂先がわかれてて、まるでねこの足のよう。
雑穀のアワの原種は、ねこじゃらし。
アワを植えてても、ねこじゃらしと交雑してしまう。

面白いのが、アワとねこじゃらしのあいの子を「イヌコ」と呼び区別される。
「穂が出てきたらわかるんだけんど、いぬこがよ、ほれ、わかりにくいんだ。
アワは太くて、いぬこは節がわかれてんの」

イヌコと粟の見分け方の違いを教えてもらった。
いぬこって何だかかわいい。





「焼畑は、勢いよく高く燃えるよりも、長く、低く燃やすのがいい。
地表を温めることが大事なんだ。」

50年前の記憶をたどるように話してくれた。

今回の再現では、里に近い斜面で、早朝に火を入れた。
本来は、延焼の危険のない山のもっと奥で、
日が暮れてから火を入れた。

夜なら、火の粉が間違って飛んでもよく見えるためだ。
いったん火をいれると2-3日は燃え続ける。
徹夜で番をするための出作小屋があった。

「村にはいやなやつがいたとしても、こうして共同作業があるから仲良くするしかない」

家を建てるのも、農作業も、祭りも一緒。
村はおおきな家族だったのだ。


その日、満点の星空の下に寝袋を敷き、大地の息吹を感じながら眠った。
早朝。不思議とすっきり目覚めた。
いま持っているものは本当に必要なものだろうか。
神事に使われたのは食と衣。
本来それで十分なはず。
足りないものがあるとしたらそれは思慮。
日々の暮らしの中で忘れそうになるけど、
思い出せるようにしたい。


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