2015年7月27日

暮らしの技術を学ぶ(1)鮎を泳がせる。

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冷蔵庫がない時代に食糧を貯蔵していた氷室
100年後の飢饉に備えて備蓄される日恵(ヒエ)の蔵
庭に植えられた薬に使う野草、風を読む力―。

こうした知識を持っているのはほとんどが80歳以上の高齢者で、昔ながらの生業は絶えつつあります。
聞き書き部ではこうした伝承技術の記録と現代の生活へのアレンジをテーマに活動しています。


これまで「農ある暮らしを訪ねる旅」を連載してきましたが、実際におじいちゃん、おばあちゃんの作業を手伝いながら伝承技術を学ぶシリーズ「暮らしの技術を学ぶ」をはじめたいとおもいます。


こんかいの旅をコーディネートしてくれたのは
京都府北部に位置する丹後半島、野間集落で地域づくりの仕事をしている佐藤みみずくん。


野間の漁業組合の方から鮎釣りを学び、
夜は、集落の方とBBQ、そして、140人の村民の人生を記録されている先生の上映会でした。




まず、アユ釣りをするには、組合員か年間の遊漁券がない限り、日券を漁業組合から購入する必要があります。(これがないと密漁!)





わたしたちは釣りをしたことなかったのですが、
ひとりひとりに、漁協の師匠がついてくださいました。

1台づつペアで軽トラに乗り込み、それぞれの漁場へ。



なぜ離ればなれになって漁場を探すのか?
それは、鮎は、縄張りをもつ生き物だからということです。

川で生まれ、海で成長し、産卵のために川をさかのぼるサケと反対で、
鮎は、海で生まれ、川で成長し、また海に戻る。
岩場についたコケをえさにして大きくなるのだそう。

だから、1匹の鮎がよさそうな岩場の周辺を縄張りにしていて、
入って来ようとする他の鮎を追い出す。

アユ漁は、鮎がついてそうな岩を探し出すところから始まるのだ。

 


餌は養殖の小さいアユ。
アユでアユを釣るのですね!

「おとりアユ」の鼻に「ハナワ」を掛け、
気づかれないようにうまく導いて、なわばりと思われる岩場に泳がせる。

追い出そうと攻撃をしかけてくるアユに針がかかるというもの。

ケンカ強そうな意気のいいおとりほど釣りやすいのだ。

釣り糸の針具合、動きをみながら、アユが自然に岩場に近づくよう促す。
わたしにはほとんど見えないのだけど、
糸をみると水中の様子がわかるのだといいます。




むかしは、川に足をいれたらアユにあたるくらい、たくさんのアユがいたそうです。
山が荒れて、だんだん魚が減って来ている。

森と海はつながっているのだと、
海の漁師さんからも同じ話を聞きました。

水産のことは専門外であまりよくわからないけど、
海にもどらなくなって淡水で生活するようになった魚を「陸封型」といいます。

昔は自然に海から上がって来ていたアユがあがらなくなり、
いまは、琵琶湖で養殖し、放流されています。
淡水で生まれ育ったアユは、海には戻れない・・・
毎年、琵琶湖から稚魚をもってこないといけなくなったということでした。


競争していたわけではないですが、他のみんなは釣れたのでしょうか?

Vサインをしている師匠のチームは8匹。
私のチーム(真ん中の師匠)は3匹。
そして、写真にはのっていないけど4匹。
欄外ですが、右端のチームはマイナス1(おとりアユが亡くなられました・・・)。

計15匹。川縁でアユのBBQパーティーでした。




夜は、アユ釣りの師匠が地域づくりの一環で取り組まれている
140人の村民の人生の記録写真を上映。

75歳以上の夫婦ばかりを撮りはじめて2年。
はじめはなかなか夫婦一緒に写真に撮らせてくれなかったけれど、
やがて、うちにも来てほしいという依頼が相次ぎ、
村人全員の手、生業、道具、面をテーマに撮影を開始されました。
小さい頃から生まれ育った集落の人間だからこそ撮影できる暮らしの記録。
想いが詰まった映像でした。




2日目は、植物民俗の生き字引のような、90歳のおばあちゃんについて山を歩きました。
次回は、暮らしと植物について書きたいと思います。

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