2017年4月17日

ならいごとの旅 in 台湾(7)地域のお母さんに学ぶ季節の保存食

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宜蘭県冬山郷のてづくりの暮らしを訪ねる

宜蘭は有機農家や移住者が多く、エコツーリズムの先進地としても知られていますが、あちこちの家庭で、醤油や豆豉、冬瓜醤、肉の漬け物など、伝統的な保存食文化がいまも暮らし根付き、季節にあわせた発酵食が仕込まれている集落がありました。

今回お邪魔したのは宜蘭冬山郷の中山集落。
この集落では地域全体でオーガニックに取り組まれていて、①宿、②食事、③体験、3つがパッケージになったプランを旅客服務中心でコーディネートしてもらうことができます。

日本で言う農家民泊が同じ地域にたくさんあつまっていて、養蜂、点心(茶菓子)づくり、保存食作り、製茶など、それぞれの農家さんが特技を活かした多様なプログラムを提供されています。

私が泊まったのは、「古意生活藝術館」。14年間上海で暮らした李さんは子どもの誕生をきっかけに家族で宜蘭にUターン。築80年の古民家を買って14年かけて集めた明清朝時代のアンティーク家具や茶器などコレクションを展示する生活様式の美術館を始める。

石を主材料とする宜蘭の伝統的な建築様式
アンティークの展示ルーム
茶席
書斎

寝室からの風景
あさごはん

ここにやってくるひとには、茶道家や書家、舞踏家など芸術家や、奥さんが講師をされている手しごと(染め、皮裁縫)の工房にならいごとに来る人、食事を楽しみに来る人、骨董品を見に来る人、様々な感心をもった人たちがやってくるといいます。
てしごとのアトリエ
まず、わたしが何を求めてここへやってきたのか、ヒアリング。

そして、うん、わかった、 といって、李さん、奥に消える。
つぎつぎに、いろんなものがとびだし、まさに、それは求めていたものだったのです。

豆豉、漬け物、豆腐乳、冬瓜醤、保存食がごろごろでてきます。
豆腐乳

おかあさんてづくりの豆豉

苗栗産、柚子茶
ベニコウジ落花生

保存食のシーズンは、日本と違って、台湾では夏が本場。
日本だと冬にする仕事だというと、びっくりされました。「冬に発酵するのか?夏にならないと発酵しない。」と。台湾では、日本のように、麹をつくるときにわざわざ手間をかけて熱源をつかって加温する必要はなく、夏に仕込むので自然と温度があがっていくのだ。確かに効率的なように思えます。

それと、夏に仕込むもうひとつの理由は、原料の収穫シーズンだから。保存食とは、豆や冬瓜、夏野菜が大量にとれてしまう時期に仕込むものなのです。実に合理的。

金柑糟
「うちにあるものは全部てづくり。できあいのもの、工場のものは買わない」

物々交換の精神を中国語で「以物易物」というそう。それぞれが得意な物を作って、近所の人と交換し、「共食」すればお金はいらない。お金以上にたいせつなものは、ひととひととのつながりだったり、心が豊かであること。
その対義語が「以金易物」、お金を出せばいろんなものが簡単に手に入る世の中だけど、昔の人たちは、苦労していき、お金がなかったから自分たちで工夫してつくってきた。いまは1年かけて豆をそだてて、醤油をつくるひとはまずいないけど、買っているものを作っている人たちがどこかにいて、見えないところでそれを代わりにやってくれてるひとがいることを忘れてはいけない。

と李さん。その生き方に共感するところがありました。
翌日、宜蘭県冬山郷に住むいろんなひとたちの暮らしを案内してくれました。

まずは、80歳になるおじい、おばあのおうちへ。

雨の少ない宜蘭では、畑にも田んぼのように水をはっているのだそう
おばあに保存食を学ぶ
おばあの畑から野菜をいただく
なぜか「A菜」というらしい。
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おばあちゃんにきいた冬瓜醤のレシピ:
米醤:塩:砂糖=5:1:2
冬瓜の皮を向き、太陽にさらす。まずは1晩塩漬けにし、2日目にまた干す。
上のバランスで冬瓜と米醤(米麹+酒)をまぜる。常温で2ヶ月おくとできあがり!
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「ここらへんの家庭ではそれぞれ、みんな醤油や豆豉、豆腐乳はつくっているけれど、中でも得意なおばあは、作った物を販売もしている」
商品を販売している近所のおばちゃんを紹介してくれました。

ベニコウジの豆腐乳と米醤の豆腐乳
樹豆の保存食
夏には豆麹を大量に仕込むというおかみさんをたずねました。芳岳茶園では、豆豉や豆腐乳の作り方をたまにおしえているという。

夏に来たら教えてあげるよ、とおかみさん。台湾では、グループでの活動が基本的で、シングルルームの料金設定がないほど一人旅はすくなく、訪問や体験も、参加者がひとりではなかなか頼みにくいので次回はぜひとも一緒に参加してください!夏に一緒にいってもらえる同行者を随時募集中です!


李さんと近所の芳岳茶園のおかみさんと
畑や市場で集めた食材をつかって料理。

宜蘭では鯖魚祭という季節がある伝統的な食材

にんにくの葉
80になるおばあに「菜頭顆」という春節に食べるお祭りの料理を教えてもらいました。
この食べ物は1年に一度食べるおめでたいお料理で、いまの若い人たちは作らなくなってしまい、李さん夫妻も実は初めて作るのだと言います。
大根は台湾では冬に採れる作物で、いまは旬ではないので、仕方なく市場で買いにいきました。

まず、大根を千切りにし、釜で炒めます。


餅米粉、塩、砂糖をたし、蒸すこと約2時間。

固まったら火からおろし、冷やします。
ちょっと水分が多すぎてうまく固まらなかったようですが、味はおいしくできあがりました。


薬膳の要素を取り入れたランチタイム。
薬膳の知恵を母から自然と受け継いだというおかみさんが冷性のもの、温性のもののバランスのとりかたを解説してくれます。


レストランだけの予約も可
古意生活藝術館
地址:宜蘭縣冬山鄉中山村新寮路461巷28號
http://www.antique-inn.com/

移住者がつくる保存食のレストラン

宜蘭というと、古老ではなく、若い移住組の女性でもうひとり紹介したい方がいます。

貓小姐食堂オーナーの「猫小姐」は、元獣医さんで、「猫ねえさん」の相性で呼ばれるようになりました。

漬け物や保存食を食べる人は減り、外食が多くなった今、ほとんどのレストランでは手作りの物を置かなくなる中、猫ねえさんは、使われなくなった伝統的なれんが造りの精米施設を仲間とともに再生し、一つの家族のように4軒のお店が軒を連ねるオーガニック・コンプレックスに改装しました。

「永慶商店」、「猫小姐食堂」、「倆佰甲友善餐飲」、「小間書菜(本屋)」、それぞれのお店が個性と地の伝統を生かした古くて新しいものづくりを進める。納屋から出て来た田植えの道具や壷、木のベンチ、古いものを活かしたおしゃれなデザインの店作りをされていて、レトロな雰囲気の食堂には漬け物やピクルス、リキュールなど、瓶がずらりと並びます。

食材にはCSAのコンセプトでつながりのある有機農家の野菜を使い、お米は自分で育てたものだそうです。

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