2017年8月3日
台湾食農之旅【有機農業編】大学から広がるオーガニック運動
台湾のオーガニック事情
台湾の旅【主題 Theme:有機農業 Organic Agriculture編】台湾1週間の旅から戻りました。テーマその1オーガニック運動について。
中興大学有機農夫市集 |
まず、中興大学有機農業農夫市集の楊マネージャーのご案内でオーガニックマーケットへ。
2007年9月、当初12 軒の生産者で始まったこのマーケットは、毎週土曜日に開かれていて、今では40 軒の生産者が出店されています。家族経営の小規模農業者が多く、販売額の50%がオーガニックマーケットでの収入になっているところも少なくないそうです。
オーガニックマーケットの運営システムについて説明する楊マネージャー |
面白いなあと思ったのが、大学発の市民運動というところ。 台湾の大学(中国大陸もそうですが)を訪ねると、太極拳をしているひとがいたり、卓球をしている人がいたり、あきらかに大学生じゃない地域のおじさん、おばさんが、大学を活動の場にしています。 日本だと、一般人も入れる食堂は見かけますが、大学というと、ちょっと敷居が高くて入りにくい場所ではないでしょうか。
有機農業者があつまり、生産者があつまり、交流の場が研究になり、そして研究が実社会にフィードバックされていく。生産者も研究課題を意識できるようになり、生きた研究の場になっていく。面白い環境だなあと思います。
台湾で有機農業がまだそれほど認知されていなかった10年前、オーガニックマーケットの先駆けとして、中興大学が中心となって有機農産物の販売の場をつくられて来ました。
いまでは、大学が運営に関わるオーガニックマーケットが5つあるようです。
楊マネージャーが語る、有機農夫市集のテーマとは?
(1)生産者と消費者をつなげる
このオーガニックマーケットでは、参加条件として有機認証の取得が義務づけられており、店名とともに産地、有機認証を受けた作物、認証機関など生産者の情報が掲げられています。そして、大学である中興大学が有機認証機関の一つになっています。
その他の台湾の有機認証機関一覧はこちら。成功大学も大学の有機認証機関。 http://info.organic.org.tw/supergood/front/bin/ptlist.phtml?Category=100989
参加者の1 人からこんな質問が。 「有機認証をとっていたら、絶対農薬使っていないと保証できるのですか?」
何年かに一度、認証を受ける際には検査するけれど、ずっと使っていない保証は?信用の問題?
全ての生産者の商品には認証マークがついているのですが、本当に農薬を使っていないかどうかは、月1回、出店されている商品の中から、ランダムに選んだ農産品を検査にかけ、残留農薬テストをされています。消費者が確認できるように、検査機関の結果を会場で周知されていました。国家認証に加え、マーケット運営者がダブルチェックが行うことで、安全を確認されているのでした。
マーケットの利用者は、ほぼ3km圏内のお客さんで、一日1000〜1500名の利用者があり、月平均3−4回きているとのこと。遠くから買いにこられる方もあるけれど、身近な住民に受け入れられているマーケットになっていました。
(2)生産者と生産者をつなげる
いまや、40軒が出店するオーガニックマーケットですが、知名度があがり、出店希望の生産者は増えているけれど、出店者を増やす予定はいまのところないとマネージャー。というのも、生産者を消費者とつなげることも大事だけど、生産者同士が一体となることも大事だからといいます。
マーケットの商品はだいたい9時半には売り切れることも多い。昼には店をたたみ、午後はともにご飯をたべて生産者同士で技術交流やマーケティングなど情報交換をはかる時間を設けている。
売れば終わりではなく、生産者同士がつながって、選択の幅を増やしていくこと、つながりを大事にしていくこと、この温度感を共有できるメンバーで続けていくため、出店する生産者を選んでいるのだそうです。
将来の展望を聞くと、いま、台湾でブームになっているのが食育。生産者を増やすのではなく、密にしていくことが今後の課題だと言います。消費者に生産者からレクチャーしてもらったり、ワークショップしたり、もっと交流の機会を作っていきたいとのことでした。
ちなみに、学校の食育で使われる有機農業の食育手帖には、オーガニック認証や、有機農法について詳しく書かれています。コラムには、「奇跡のりんご」の木村秋則さんも登場。義務教育の中にも、有機農業が食育として取り組まれています。
台中に行かれることがあれば一度訪問してみませんか?
中興大学有機農夫市集HP
http://www.organicnchu.twmail.org
マーケットで仕入れた素材で、宮崎県の郷土料理をおしえる藤䉤しほさん。
3種類のサツマイモ。
オーガニックマーケットからの差し入れもいただきこんなかんじに。
台湾と日本の持続可能な農業の未来を語る
========================================================2017臺日興農交流分享會 - 台灣與日本農業交流的永續未來 」のプログラム ========================================================
13:00-13:40 台湾塾:Share the challenge and solution 農と食をベースとした日台のプラットフォーム作りについて
高峰由美小姐 (台灣塾負責人)
13:40-14:40 台湾・沖縄における有機農業の栽培技術とマーケティングの現状と課題について
玉城克明先生 (日本沖繩縣有機及無農藥蔬果販售)
陳德倫先生 (台灣柑仔店有機健康超市董事長)
15:00-16:00 小規模食品開発事業での持続可能な未来
許宏賓先生 (台灣彰化縣樂農發生技農產行)
陳麗婷小姐 (財團法人食品工業發展研究所研究員)
16:00-17:00 BUY LOCAL Project - 広がれBUY LOCALの輪!
田中伸佳先生 (日本宮崎縣農產品地產地銷計畫負責人)
卓青楓先生 (台灣苗栗縣青楓有機農場)
17:00-18:00 台湾と日本の持続可能なアグリツーリズム
前田知里小姐 (里山文庫)
游恩政先生 (台灣南投縣台一生態休閒農場)
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(すみませんが、書ききれないので発表内容については割愛します。)
台湾塾の発表 高峰さん、田中さん。
聞き書きによる地域資源の掘り起こしとグリーンツーリズムへの活用というテーマで事例発表させていただきました。
懇親会にて。挨拶する企画者の蘇くん。
オーガニックなお店訪問
台北に戻り、在来作物をテーマとしたフェアトレードのショップ、米蔵リノベの複合施設ストリート、生産者や地域支援に取り組まれている旅行社などなど、訪問してきました。ボランティアではなく、お金を払って食の生産者から学ばせてもらう旅のスタイル。日本へも手仕事を訪ねるディープなツアーを年5−6本つくられているそうです。◎ニュースメディア発のオーガニックショップ
台中市にある「上下游」は、ニュースメディアから始まったオーガニックショップの一つで、農業や環境に関する市民の取り組みを伝えるメディアでしたが、レポートするだけでなく、彼らの活動を支援しようと、農産品や加工品、雑誌などを販売するニューススタンド兼オーガニックショップを開設しました。その商品の背景にある物語を伝え、共感してもらえる応援者を増やすというもの。商品が生まれるまでの過程や苦労を知っているからこそ生産者の素顔を伝えられるのです。雑誌に出てくる商品を購入できたり、売られている商品のストーリーを雑誌の切り抜きで伝えたり、メディアから生まれたショップならではの店作りはとても参考になります。地址:40348台中市西區五權西二街100號
電話:04-2378-3835
URL:http://www.newsmarket.com.tw/
◎「ごはんの魅力を伝えたい」米商人のリノベショップ
最盛期には60名が居住していたという100年の米商施設「大稻埕」は、10年前、所有者の葉氏が再開発をはじめ、陶芸作家などアーティストの展示の場やカフェスペース等おしゃれにうまれかわる。「葉晉發商號」は、米商人の原点に返ったお米を扱うショップ。
核家族となったいま、2人分にパッケージされた在来種のお米と原住民族の粟や藜をセットで販売する。
「お米がわたしたちの原点。米の品種や栄養価のたかい雑穀とのブレンド、食べ方をつたえたい。」と店員さん。店内にはミュージアムのように食具やレシピ、お米の交配の系譜、生産地の様子など、写真いっぱいのボードが並びます。
お米や雑穀の食べ方を展示。展示は、3ヶ月ごとに入れ替わると言います。
10種類の特色ある在来米を2人前から販売する他、量り売りも。
葉晉發米糧行
住所:台北市大同區迪化街一段296號
営業時間:11:00-18:00 定休日:火曜
交通:MRT大橋頭駅から徒歩7分
URL:https://www.facebook.com/yehjinfa/
◎たねを食べるカフェ
台北の台湾大学付近にある「Fruit Hunter」は、台湾在来の穀物(胡麻、雑穀、小豆)や果物、お茶をメインに、ちいさな農家からの直接買い付けにこだわるカフェ。店の前の看板には「好種紀 faith in a seed」と書かれています。何と、ときめく響きでしょう!たねマニアの私には、入らずにはいられないカフェでした。店の中には、白い壁一面に生産者を訪ねて旅するVTRが流れ、作物を紹介するパネルがちりばめられています。ドリンクメニューは自分で好きな素材を組み合わせて注文するスタイル。タイヤル族の桃に、坪林産の藍鵲茶を加えてみたり、毎回違ったバリエーションを楽しめるのでした。
Fruit Hunter
地址:台北市大安區新生南路三段96號
電話:02-2363-1444106
URL:http://fruithunter.com.tw
台湾と日本は同じ島国で海のものと高地のものが共につながっていること、小さい耕作地で家族経営的な農業が多いこと、オーガニックの普及率もどちらも1%以下と、共通点も多く、技術・情報の交換はお互いの参考になることもあると思います。またの機会があればぜひ参加したいです。
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