2012年5月29日

民族植物学(1)貧しい家は娘を百姓に嫁がせた

1 件のコメント :
前回、山奥に住むおばあさんから植物の知識を習っていると書きました。

前回記事:伊根の奥座敷のカントリーライフ

昔の人が持っていた植物の利用方法に関する知識や民間伝承を研究する学問に、Ethonobotany(民族植物学)というのがあります。薬学、歴史、民俗学、植物学、社会学などが融合したような幅広い学問領域です。

エスノボタニーについて初めて知ったのは、ブータンの図書館です。
ブータン人はどのように野生の植物を使っているのか。これってめっちゃおもしろい!
30の村を回りながら、「ローカルヒーラー」と呼ばれる呪術師がどんな治療をするのか、どんな植物を使うのか、聞き込みしました。

そして、チベット医学の先生や、薬草の研究者に話を聞きに行くと、「ええっ!どこでこれを聞いたの?」と、研究者も民間伝承の知識にびっくりだったのです。

ブータンの薬草

実際、昔ながらの植物と人のかかわりを見直す中で生まれた食品や医薬品、化粧品などもあります。
「おばあちゃんの知恵」はあなどれません!

私は特に、昭和初期の人たちが持っていた生きる知恵に興味があり、お話を聞きに行ってます。
ちよりさん(87)にお願いして、一緒に山歩きに連れて行ってもらいました。


ちよりさんのお話

  • リョウブの花を蒸して、ご飯をかさ上げするのに使った。
リョウブは、決しておいしくはないが、昔は食べるものがなく、食べれるものは何でも食べた。食べれない家は、娘を百姓に嫁がせた。百姓なら食べるのに困らないだろうという時代だった。
後取りがいない家に息子を養子に出すこともよくあった。うちの弟は、和菓子屋に養子に行った。「あんた息子いっぱいいるだろ、一人くれや」「おお、わかった」簡単な会話で決まった。弟は「羊羹が毎日食べられる」といって喜んで行った。

別の村に嫁いだ娘は、これから先何があっても帰れないという覚悟をしていた。舅、姑の言うことを聞き、間違っていると思っても何も言えなかった。夫の兄弟が7人いた。下は小学生だった。子供と兄弟の面倒を見、老いた父母を世話し、自分の老後やっと好きなことをできるようになった。


桜、タニウツギ、そしてサルスベリが最後に咲く。花も人間と一緒で、咲く時期が違う。私は、80になってやっと花を咲かせられた。自分の好きなことができるようになった。

その他植物の使い方
  • 昔はササユリが咲くと田植えが始まった。
  • カイモチを作るときに、くず米を粉にして、ヤマゴボウとかヨモギをつなぎにつかった。
  • スギナを生で空炒りにすると、香りがよく、きれいな緑色のお茶になる。
  • タニウツギとノリウツギがあって、ノリウツギは和紙を漉くときのノリにつかう。 
  • モチバナ木を作るとき、枝に使うのがクロモジ。お茶の楊枝にも使う。
  • ホタルブクロの花が咲くと蛍の季節。
  • エゴノキをせっけんに使った。
ちよりさんが弁当をもってきてくれた。フキの葉に包まれた弁当。タカナの塩漬けのおにぎり、奈良漬。シンプルでおいしかった。丘にご座を広げて、お茶をたててくれた。最高の野点でした。

須川渓谷は平家の落人の村があった。今は廃墟しか残ってないが、昔はここが通学路だったそう。学童は弁当2食もって出かけ、夕食を途中で食べ、暗くなったら親衆が途中まで迎えに来ました。須川渓谷にはつるはしで掘った手彫りのトンネルがあり、昔の人が行きかった峠の名残が偲ばれます。
 
手彫りのトンネル


渓流



















さて、トチモチ、カイモチ、トリモチを実際どうやって作っていたのか、なんだかそれが面白い商品にならないかな。民族植物学の勉強は続きます・・・


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1 件のコメント :

  1. 植物民俗学、でいろいろ拾ってたらたまたまたどり着いたんですが・・・おもしろい、って言ったら失礼になっちゃいますけど、このおばあちゃんの知恵はいいなぁ。

    あっ、わたしは鹿児島県のとある中山間地域で農業資材の試験をしながら地域の森林と耕作放棄地の活用を模索しているモノです。前田さんと同じく、地元ローカルのじいちゃん・ばーちゃんがもっぱら師匠です。

    こういう土地に根付いた生活の知恵って、放っておけば誰も省みないままなくなってしまいますよね。それは絶対避けたい!
    わたしは昔そういう知恵をさがしてわざわざ北米先住民のとこまで通ったりしたんですけど、なんだ日本も結構凄いじゃん、とさいきんヒシヒシと思うのです。

    またコメントしま~す。

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